【硬質赤玉土】普通との違い|「三本線」の正体と、崩れるまでの時間で選ぶ

素焼き鉢に植物を植え替えている手元。鉢と土、スコップが並ぶ

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赤玉土を買いに行ったら、隣に『硬質』と書かれた袋があった

値段は少し高い。何が違うのかはわからない。

そんな経験はありませんか。

袋には「硬質」「焼成」「三本線」など、いろいろな言葉が並んでいます。どれも良さそうに見えますが、何がどう違うのかは書かれていません。結局、安い方を買って帰る。

多くの人は「硬いぶん長持ちするのだろう」と考えます。その理解は間違っていません。ただ、それだけでは「じゃあ自分はどれを買えばいいのか」に答えが出ません。

実はこの「硬質」という言葉、国が定めた品質表示のルールの外にあります。地力増進法にもとづく「土壌改良資材品質表示基準」という告示があり、表示の決まりが定められているのは泥炭・バークたい肥・木炭・ゼオライト・バーミキュライト・パーライトなど12種類です。赤玉土はこの中に入っていません。だから袋の表示を見比べても、迷って当然なのです。

この記事では、赤玉土がなぜ粒の形をしているのかというところから順に見ていきます。そこがわかると、硬質を選ぶべき場面と、選ばなくていい場面が自分で判断できるようになります。


目次

赤玉土って、そもそも何?

赤玉土は、関東の火山灰が積もってできた土から作られています。

北海道立総合研究機構の資料では、赤土を「関東地方に多い火山灰土壌のうち黒土(表土)の下層にある赤褐色の粘質土」と説明しています。そしてその赤土をふるいにかけ、大・中・小の粒に揃えたものが赤玉土です。

大事なのは、赤玉土が「加工品」だということです。掘ってきた土をそのまま袋に入れているのではなく、ふるいを通して粒の大きさを揃えています。

この「粒に揃える」という工程に、赤玉土の価値のほとんどが詰まっています。

なぜ「粒であること」が効くのか

ここが今回いちばん大事な部分です。

千葉大学の研究チームが、赤玉土を粒のままの状態と、すりつぶして泥状にした状態で比べています。

結果はこうでした。

  • 粒のままだと、粒と粒のあいだに隙間ができる。そのぶん隙間の割合が9%増えた
  • 泥状にすると、水が動きやすくなり、粒のときより蒸発が速かった

つまり粒のまま使うと、粒どうしのあいだに空気の通り道ができるということです。「水はけが良いのに水もちも良い」という性質は、ここから生まれます。(なおこの9%は、特定の実験条件で確認された数値です)

赤玉土の隙間は、二階建てになっています。

  • 粒の中の細かい穴 → 水をためておく場所
  • 粒と粒のあいだの隙間 → 水が抜け、空気が入る通り道

「水はけが良いのに水持ちも良い」という、一見矛盾した性質はここから来ています。二種類の隙間が、別々の仕事をしているからです。

逆に言うと、粒が崩れた瞬間に、二階部分がなくなります。水の通り道が消えて、細かい穴だけが残る。これが赤玉土で根腐れが起きる理由で書いた現象の正体です。

粒が崩れる → 粒と粒のあいだの隙間が消える → 空気の通り道がなくなる。

→ これだから、水はけが良かったはずの土で根が傷みます。

「硬質」とは何を指しているのか

崩れると困る。だから崩れにくくしたい。そこで出てくるのが「硬質」です。

硬質赤玉土は、加熱して硬くした赤玉土です。「焼成」と書かれているものも同じ考え方によるものです。

土は熱をかけると性質が変わります。これ自体は園芸だけの話ではなく、土木の分野でも、粘り気のある土を熱処理で強くする工法が古くから論じられてきました(応用地質1965年)。ただしこれは土木分野の研究で、園芸用の硬質赤玉土がどれだけ硬くなるかを示すものではありません。各社が公表している性能データは、いまのところ見当たりません。

ただし、ここに落とし穴があります。

先ほど触れたとおり、赤玉土は国の品質表示基準の対象外です。「硬質」や「焼成」をどう名乗るかは、メーカーの判断にゆだねられています。実際、代表的なメーカーの商品ページを見ても、焼成温度や処理時間は公表されていません。「当社独自の焼成技術」と書かれているだけです。

つまり「硬質」は、メーカーが名乗っている呼び名であって、共通のものさしではありません。A社の硬質とB社の硬質が同じ硬さである保証はない、ということです。

「三本線」は品質のランクではありません

赤玉土を探していると「三本線」という言葉に出会います。「二本線」もあります。

線の数が多いほど良い、という等級表示に見えます。実際、検索でもよく調べられています。

しかし「三本線」は、株式会社プランティーションイワモトが「登録商標」として表示しているブランド名です。

今回調べた範囲では、線の数を業界共通の品質等級と定めた公的な資料は見当たりませんでした。他社製品に一本線や四本線があるわけでもありません。

これは品質が低いという話ではありません。実際に評価されている製品です(イワモトの「三本線」焼成硬質赤玉土)。ただ「三本線だから上等」という理解のしかたは、事実とずれています。他社の硬質赤玉土と比べるときは、線の数ではなく、粒の状態そのものを見る必要があります。

粒の大きさをどう選ぶか

袋には粒の大きさが書かれています。メーカーが公表している区分は次のとおりです。

呼び名大きさの目安主な使いどころ
大粒10〜18mm鉢底に敷く。大きな鉢の下層
中粒6〜10mm大きめの鉢の基本用土
小粒3〜6mm一般的な鉢の基本用土。迷ったらここ
極小粒2〜3mm小さい鉢、細かい根の植物
細粒1〜2mm種まき、挿し木、多肉植物の配合

粒が小さいほど、粒と粒のあいだの隙間も小さくなります。水は残りやすく、空気は入りにくい。大きいほどその逆です。

配合の考え方は赤玉土の使い方と配合で詳しく扱っています。ここでは「小さい粒ほど乾きにくい」とだけ覚えておいてください。

では、どれを選ぶか

普通の赤玉土と硬質赤玉土を並べます。

普通の赤玉土硬質赤玉土
作り方ふるいで粒に揃えたもの加熱して硬くしたもの
崩れやすさ水やりを重ねると崩れていく崩れにくい
値段比較的安い同じ容量でも高くなる
向いている場面1〜2年ごとに植え替える鉢長く植え替えない鉢
向かない場面何年も放置する鉢毎年土を替えるなら過剰

判断の基準は、硬さではなく「次にいつ植え替えるか」です。以下は公的な基準ではなく、園芸で一般に言われる目安として読んでください。

  • 1〜2年ごとに植え替えている → 普通の赤玉土で十分。崩れる前に土が入れ替わります
  • 3年以上そのままにする → 硬質を選ぶ価値があります
  • 盆栽や、根をあまり触りたくない植物 → 硬質。メーカーも「何年も土替えをしない盆栽などの栽培にも適している」としています

硬質赤玉土は「三本線」だけではありません。たとえば刀川平和農園の硬質赤玉土のように、別のメーカーが独自の焼成技術で作っているものもあります。どちらが硬いかは、袋の表示だけでは比べられません。共通のものさしがないからです。手に入るものの中から、粒が揃っていて微塵の少ないものを選ぶのが現実的です。

値段が上がっても、植え替えの回数が減るなら、結果的には安く済みます。逆に毎年植え替えるなら、硬質にお金をかける意味は薄くなります。

買うときに見るべきものが、もうひとつあります。

袋の底に粉がたまっていないかです。粒が崩れてできた細かい粉は「微塵(みじん)」と呼ばれます。これが多いと、鉢に入れた時点で隙間を埋めてしまいます。メーカーが「微塵の少ない」とうたうのは、そこが品質の差になるからです。

店頭で袋を持ち上げて、底に赤い粉が溜まっているものは避けてください。同じ「硬質」でも状態には差があります。買ってから気になったときは、替えアミが3枚付いた園芸用のふるいを通せば微塵だけを落とせます。網目を替えれば粒の大きさで分けられるので、崩れかけた土の再生にも使えます。なお鹿沼土にも同じことが言えます。

まとめ

硬質赤玉土は「上等な赤玉土」ではありません。崩れるまでの時間を買う土です。

要点を整理します。

  • 赤玉土は赤土をふるいにかけて粒に揃えた加工品。粒であること自体に価値がある
  • 粒と粒のあいだに隙間ができることで、隙間の割合が9%増える(千葉大学の研究)
  • その隙間が空気の通り道になる。崩れると通り道が消える
  • 「硬質」「焼成」は加熱して硬くしたもの。ただし赤玉土は国の品質表示基準(12資材)の対象外
  • 「三本線」はメーカーのブランド名。業界共通の等級だと示す資料は見つからなかった
  • 選ぶ基準は硬さではなく「次にいつ植え替えるか」
  • 袋の底に微塵(細かい粉)が溜まっているものは避ける

赤玉土は粒であることで、水をためる場所と空気が通る道を同時に持っています。硬質を選ぶというのは、その状態をどれだけ長く保ちたいかを決めることです。

粒が保たれている → 水と空気が同居できる → 根が育つ。

→ これだから、こうなる。

次に袋を手に取るときは、値段の前に「この鉢、次はいつ触るだろう」と考えてみてください。そこで答えが出ます。


参考文献

・農林水産省「土壌改良資材品質表示基準」(昭和59年農林水産省告示第2002号) https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000035.html

・高錫九・矢橋晨吾・雨宮悠「団粒性用土『赤玉』の水分保持機能について」造園雑誌55巻5号145-150頁(1991年、千葉大学) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila1934/55/5/55_5_145/_article/-char/ja/

・山田剛二「熱処理による土の強化(焼結工法)」応用地質6巻4号199-211頁(1965年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/6/4/6_4_199/_article/-char/ja/

・北海道立総合研究機構 農業研究本部「北海道の耕地土壌Q&A Q.15 園芸用品の土」 https://www.hro.or.jp/agricultural/center/research-topics/soilqamain/q15.html

・株式会社プランティーションイワモト「ハイグレード【焼成・硬質赤玉土】14L」 https://www.p-iwamoto.co.jp/item/g01-tuti-akas-0014-01/

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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