【解析】牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の違い|観葉植物・室内で使えるか

茶色い繊維質の有機質資材の山にシャベルが刺さっている様子

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観葉植物や庭の土づくりを調べていると、「牛ふん堆肥」と「鶏ふん堆肥」という名前によく出会います。

畑では昔から使われてきた資材ですが、観葉植物の鉢に同じ感覚で混ぜていいのかは、はっきりしません。そもそも室内に置いても大丈夫なのか、分からないまま袋を手に取っている人も多いのではないでしょうか。

多くの人は、「堆肥は土に混ぜるほど土が良くなる。有機物だから安全だろう」と考えます。もちろんそれも一因ですが、それだけでは説明できないことがあります。同じ「堆肥」という名前でも、牛ふんと鶏ふんでは中身の濃さが違います。畑と室内の鉢とでは、資材の周りを流れる空気の量もまったく違います。

実は裏側には、堆肥が「発酵」という現象を経て作られる、共通のしくみが関係しています。

この記事を読むと、牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の違いが分かります。観葉植物や室内の鉢植えに使ってよいかどうかも、しくみから判断できるようになります。

目次

堆肥ってなに?

堆肥(たいひ)とは、家畜のふんや稲わらなどの有機物を積み重ね、微生物の力で発酵させてから使う資材のことです。

日本には、肥料をきちんと管理するための法律があります。肥料取締法(正式には肥料の品質の確保等に関する法律)では、肥料を大きく「特殊肥料」と「普通肥料」の2種類に分けています。堆肥は、農林水産大臣が指定する「特殊肥料」にあたります。米ぬかなどと同じ枠組みで、生産する人は都道府県知事に届け出る必要がある資材です。

つまり堆肥は、思いつきで作られている資材ではありません。法律の枠組みの中で扱われている、れっきとした肥料の一種だということです。

堆肥ができるまで

牛ふん堆肥も鶏ふん堆肥も、できあがるまでの流れは同じです。この流れを知っておくと、あとで説明する「未熟な堆肥」の話が理解しやすくなります。

これだからこうなる
生の家畜ふんを積み上げる

分解しやすい有機物と、臭いのもとになる物質が混ざった状態です。

これだからこうなる
微生物が分解しやすい有機物を分解する

たんぱく質や糖などが微生物のエサになり、分解が進みます。

これだからこうなる
発酵熱で温度が60〜80℃まで上がる

この高温が、病原菌や雑草の種を死滅させます。

これだからこうなる
水分が蒸発していく

熱によって水分が抜け、かさが減っていきます。

これだからこうなる
分解されにくい有機物と少しの水分だけが残る

これが完成した堆肥です。臭いのもとになる物質はすでに分解されているため、刺激臭が少なくなっています。

この「十分に発酵が進んでいるかどうか」を、堆肥の世界では腐熟度(ふじゅくど)と呼びます。農林水産省の資料には、腐熟度を判定する方法が示されています。色が暗褐色から黒色へ変化しているか、原材料が指で崩れるかどうか、水分の状態、臭い(アンモニア臭や刺激臭が残っていないか)、発酵温度など。こうした点をチェックする方法です。

牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥、何が違うのか

牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥は、どちらも「家畜ふん堆肥」という同じ仲間ですが、中身の濃さがまったく違います。

農林水産省の資料に、両者の成分を比べた数値があります。現物あたりの割合で見ると、次の表のとおりです。乾燥させたものになると、差はさらに開きます。

窒素リン酸カリ
牛ふんおがくず堆肥0.6%0.8%0.7%
鶏ふんおがくず堆肥1.5%2.5%1.5%
乾燥牛ふん1.6%1.9%1.4%
乾燥鶏ふん3.6%4.0%2.2%

効き目の速さも違います。堆肥に含まれる養分のうち、実際に植物が使える割合を「肥効率」と呼びます。鶏ふん堆肥は肥効率が高く、牛ふん堆肥は低い。これが2つの資料に共通する傾向です。

出典牛ふん堆肥鶏ふん堆肥
JA全農いばらき約3割約7割
農林水産省約2〜4割約2〜6割

数字に幅があるのは、含まれる窒素の量など、資料ごとに前提条件が違うためです。それでも、鶏ふん堆肥のほうが効き目が速く強いという方向性は共通しています。牛ふん堆肥を化学肥料の代わりに使うには、物足りないということです。

効き方をたとえるなら、牛ふん堆肥は、飲んでから一日じわじわ効いてくる漢方薬のようなもの。鶏ふん堆肥は、飲んですぐに効いてくる栄養ドリンクのようなものです。どちらが優れているという話ではなく、効き方の性格が違うということです。

牛ふん堆肥鶏ふん堆肥
窒素(現物あたり)約0.6〜1.6%約1.5〜3.6%
窒素の肥効率(目安)約2〜3割約6〜7割
効き方ゆっくり長く続く速く、強く出る
向いている使い方土そのものを長い目で改良したいとき短期間で肥料効果を出したいとき

鶏ふん堆肥はなぜアルカリ性に傾きやすいのか

牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥は、土の性質への影響でも違いが出ます。

農林水産省の資料に、牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥に含まれる石灰分(カルシウム化合物)の量を比べたデータがあります。乾物あたりでみると、牛ふん堆肥の石灰分が2.31%であるのに対し、鶏ふん堆肥は11.32%と、5倍近くあります。

石灰分の多い資材を土に混ぜると、土は酸性からアルカリ性の方向へ傾きます。日本土壌肥料学雑誌に、酸性の土(マージ土壌、pH4.4)に鶏ふん堆肥を多めに混ぜ込んだ実験の記録があります。混ぜた直後にpHが6.0まで上がったというものです。同じ実験で牛ふん堆肥を混ぜた場合は、pH5.1前後とほとんど変わりませんでした。この実験は特定の酸性土壌・多めの施用量での結果なので、「鶏ふん堆肥は必ず土をアルカリ性にする」と言い切れるわけではありません。ただ、酸性の土に石灰分の多い鶏ふん堆肥を施すと、pHを上げる方向に働くことがある、とはいえそうです。

これは、水にひとつまみの重曹(じゅうそう)を溶かすと、酸性寄りだった水がアルカリ性の方向へ動くのと似ています。重曹がアルカリ性の性質を持つように、鶏ふん堆肥に多く含まれる石灰分もアルカリ性の性質を持っています。

全国鉢物類振興プロジェクト協議会などの資料では、土壌のpHは5.5〜7.5の範囲であれば問題ないとされています。すでにアルカリ性に傾いている土に、鶏ふん堆肥をさらに足すと、この範囲から外れやすくなります。

未熟なまま使うとどうなるか

堆肥は、「十分に腐熟した」ものを使うことが前提になっています。まだ発酵が終わっていない未熟な堆肥を土に混ぜると、いくつかの障害が起きることが分かっています。

ひとつは、ガス障害です。未熟な堆肥は土の中で発酵が続き、アンモニアなどのガスが発生します。このガスが根に直接触れると、根が傷んで生育が悪くなります。

もうひとつは、肥料焼けです。養分が急に土の中に放出されると、土の中の塩分濃度(専門的にはEC値と呼ばれます)が急に上がります。すると根が水分を吸えなくなります。

これは、漬け込んだばかりのぬか床に手を入れる感覚に近いかもしれません。漬け始めて間もないぬか床は、まだ発酵の途中でガスがぷくぷくと出ています。未熟な堆肥を土に混ぜるのも、これと同じ状態です。土の中で発酵の続きが起きていて、根はそのガスの中に置かれることになります。

腐葉土でも、未熟なものを使うと同じような障害が起きます(→腐葉土のpH・栄養素)。有機物を使う資材に共通する注意点だと考えておくと分かりやすいはずです。

観葉植物・鉢植え、室内で使ってもいいのか

ここまでの話は、畑でも鉢でも共通しています。しかし、観葉植物の鉢や室内という条件になると、もうひとつ考えなければならないことが増えます。空気の動きです。

全国鉢物類振興プロジェクト協議会と一般財団法人日本花普及センターがまとめた資料に、次のような記述があります。「屋内では空気の動きが少ないため有機質が多いと腐敗が起きやすいため、有機質は3割以内とすることが望ましい」。

畑は風が吹き抜け、土の中にも常に新しい空気が入れ替わります。ところが室内に置かれた鉢の中は、風がほとんど動きません。同じ量の堆肥を混ぜても、畑より発酵や腐敗が進みやすい環境だということです。

これは、生ゴミの入った三角コーナーの置き場所に似ています。風通しのいい玄関に置いた場合と、窓を閉め切った部屋の隅に置いた場合とでは、臭いの出方がまったく違うはずです。中身が同じでも、周りの空気の動きしだいで傷み方は変わります。

同じ資料は、未熟な腐葉土や堆肥は土の中で発酵し、根を痛める原因になるので避けるべきだとも述べています。鉢底石の記事で取り上げた「鉢の中は空気が入れ替わりにくい」という話(→鉢底石は本当に必要か)と、根っこは同じしくみです。

つまり、牛ふん堆肥・鶏ふん堆肥を観葉植物の鉢や室内でまったく使えないわけではありません。ただし、畑で使うときよりも「十分に腐熟しているか」を厳しく確認する必要があります。混ぜる量も、控えめにしたほうが安全です。

では、どれを選ぶか

用途によって、選ぶ基準は変わります。

牛ふん堆肥鶏ふん堆肥緩効性の化成肥料(マグァンプKなど)
主な役割土壌改良(物理性)肥料効果(速効)肥料効果(緩効)
室内・鉢植えでの適性完熟なら使いやすい屋外・庭植え向き室内向き
臭い・虫のリスク低い(完熟時)未熟だと出やすいほぼない

畑や庭植えで土そのものを長い目でふかふかにしたいなら、完熟した牛ふん堆肥が候補になります。庭植えや畑で速く肥料効果を出したいなら、鶏ふん堆肥に分があります。

一方、観葉植物の鉢や室内で、臭いや虫を気にせず元肥をやりたい場合もあるはずです。その場合は、堆肥にこだわらず、緩効性の化成肥料という選択肢もあります。このブログでは、植え替えの元肥にマグァンプKを使っています。粒の中の成分が水に溶けにくい形になっていて、一度に溶け出さず少しずつ効きます。有機物のように、発酵によるガスや虫の心配がありません。

手のひらに乗せた白い粒状の緩効性肥料と、マグァンプKのパッケージ
白い粒がマグァンプK(中粒)です。パッケージには「約1年間の効きめ」とあります。
植え替え用の鉢の土に白い粒状の肥料を混ぜ込んでいる様子
植え替えのとき、鉢の土にこの粒を混ぜ込みます。表面にばらまくだけでは効果が出にくいので、土全体に行き渡らせます。

この粒がなぜ1年ももつのかは、別の記事で扱っています(→マグァンプKはなぜ1年効くのか)。

堆肥か化成肥料かは、優劣の問題ではありません。畑の土をつくる仕事は堆肥に、室内の鉢で安全に元肥をやる仕事は緩効性の化成肥料に、役割を分けて考えると迷いにくくなります。

使うときに気をつけたいこと

  • 袋の表示や見た目・臭いで、十分に腐熟しているかを確認する(アンモニア臭が残っているものは避ける)
  • 観葉植物の鉢に使うなら、まず少量から。用土全体の量に対して、控えめな割合から様子を見る
  • 未熟な堆肥しか手に入らないときは、土に混ぜたあと1か月以上おいてから植え付ける
  • 室内で臭いや虫が気になる場合は、無理に堆肥にこだわらず、緩効性の化成肥料に切り替える

まとめ

牛ふん堆肥も鶏ふん堆肥も、「有機物だから何でも安全」という単純な資材ではありません。

牛ふん堆肥は成分が薄く、効き方が穏やかです。鶏ふん堆肥は成分が濃く石灰分が多いため、土をアルカリ性に傾けやすいという性質があります。そして、畑と室内の鉢とでは空気の動きが違うため、同じ資材でも傷み方が変わります。

成分が濃い → 土がアルカリ性に傾きやすい → 観葉植物の好む土質から外れやすい。空気が動かない室内 → 有機物が腐敗しやすい → 未熟な状態と同じ障害が出やすい。この2つの矢印が、畑の常識をそのまま鉢に持ち込んではいけない理由です。

→ これだから、堆肥は「畑用」と「鉢・室内用」で選び方を変える。

最後に、今日からできることをまとめます。

  • 手元の堆肥を袋から出し、色・形・臭いを確認する(アンモニア臭が残っていれば、まだ未熟)
  • 観葉植物の鉢に堆肥を使うときは、量を控えめにし、混ぜたあと少し時間を置いてから植え付ける
  • 室内で臭いや虫が気になるなら、堆肥ではなく緩効性の化成肥料に切り替える

参考文献

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この記事を書いた人

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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