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「赤玉土は水はけが良い」と聞いて使ったのに、なぜか調子が落ちる。
水をやりすぎているわけでもないのに、根が黒ずんでいる。
この現象は珍しくありません。
「水はけが良い」という性質そのものが崩れたとき、根腐れは起きます。
赤玉土は本来、水と空気のバランスが取れた土です。しかしそのバランスが崩れると、見た目とは逆に根にとって厳しい環境になります。なぜこのようなことが起きるのか。構造から整理します。
この記事では、その構造がなぜ崩れるのか、どうすれば防げるのかを順に見ていきます。
よくある誤解
・水はけが良い = 根腐れしない
・赤玉土を使えば安全
気持ちはわかります。「水はけが良い土」と聞けば、根腐れとは無縁に思えます。
でも実際はちがいます。「水が抜けること」と「空気が残ること」は、別のことです。
新品の赤玉土は、土全体の半分以上がすき間でできています。そのすき間に水と空気が入ります。だから水はけが良くて、それでいて水も保てる。 しかし、この構造は使い続けるうちに変化します。そこに根腐れの原因があります。
何が起きているのか
根腐れが起きているとき、土の中では「水はあるが空気がない状態」になっています。
土の中には、粒・水・空気の三つが入っています。この三つのバランスが保たれているとき、根は健康でいられます。
根は水だけでなく、酸素も必要です。空気が減ると、根は息ができなくなります。これが根腐れの正体です。
なぜそうなるのか

赤玉土は、小さな粒が集まってできています。粒と粒のあいだには、水と空気が入るすき間があります。
すき間には大小があります。大きいすき間が空気の通り道になり、小さいすき間が水をためます。この二つがあるから、赤玉土は水はけが良くて、水も保てる。一見矛盾しているようで、構造上は理にかなっています。
問題は、粒が崩れて発生する微塵です。
微塵とは、赤玉土の粒が崩れてできた細かい粉のことです。この粉がすき間に詰まると、空気の通り道がふさがれます。水は抜けにくくなり、空気も入らなくなります。
根腐れの進行ステップ
水やりや植え替えをくり返すうちに、赤玉土の粒が少しずつ崩れていく。
崩れた粒が細かい粉になり、土の中に蓄積する。
微塵がすき間を埋めていく。空気の通り道がふさがれる。
排水性が落ち、水やりのたびに土の中に水が残る時間が長くなる。
水が残っているすき間に空気が入れない。空気の量が一気に減る。
酸素が足りなくなった根は、正常に動けなくなる。
根の細胞が壊死し、植物全体の衰弱につながる。
構造を崩す要因
微塵の蓄積
使用前にふるっていない赤玉土には、製造・輸送の段階で生じた微塵が混じっています。取り除かずに使うと、最初から詰まった状態が始まります。
植え付け時の締め固め
根をしっかり固定しようとして土を強く押し込むと、すき間が物理的につぶれます。空気の通り道が使用初日からなくなります。
粒の大きさの偏り
細かい粒だけを使うと、すき間が全体的に小さくなります。水は保てますが、空気の通り道が取れなくなります。
長期間の未交換
赤玉土は使い続けるほど粒が劣化します。2〜3年が交換の目安です。劣化した土は、水やりのたびに微塵が増え続けます。
根腐れが起きやすい状況
- ふるっていない赤玉土を使っている
- 室内・日陰で乾きが遅い
- 深い鉢で底まで水が抜けにくい
- 風通しが悪い置き場所
- 2〜3年以上植え替えていない
- 水やりの間隔が短く、土が乾ききらない
同じ赤玉土でも差が出る理由
新品の赤玉土は、大きいすき間が空気の通り道になっています。水やりのあと、余分な水は重力で下に抜けていきます。するとすき間に空気が戻ってきます。
微塵が多い土は、見た目が同じでも中の状態がちがいます。すき間が詰まっているため、水やりのあとも水が長く残ります。空気が戻る時間がないまま、次の水やりが来ます。
この差が、同じ赤玉土・同じ水やりでも結果が違う原因です。
もうひとつ、土ではなく鉢の形で決まる部分があります。
アメリカの大学が出している資料によると、背の高い鉢では、水やりのあとに底へ水がたまる層ができにくいとされています。反対に、浅い鉢ではそれが起きやすくなります。
濡れたスポンジを思い浮かべてください。平らに寝かせたままだと、水を含んだままなかなか切れません。同じスポンジを立てて置くと、水は下へ落ちて、上のほうから乾いていきます。
鉢も同じです。背が高いほど、水は下へ落ちる力を強く受けます。
同じ土を入れても、鉢が浅いというだけで底に水が残るということです。土のすきまの量は、鉢の大きさでは変わらないのに、です。
つまり浅い鉢は、粉が出るより前から不利ということになります。浅い鉢を使うなら、土は粗めにしておくとつり合いが取れます。
根腐れに気づくサイン
対策の前に、今の状態を確認します。
以下のうち複数当てはまるなら、すでに根腐れが始まっている可能性があります。
・水やりから2〜3日経っても土が乾かない
・鉢を持ったとき、土が重いまま変わらない
・葉が黄色くなっているのに土は湿っている
・根が黒ずんでいる、またはぬめりがある
これらのサインが出ているなら、土を替えるタイミングです。
対策より先に、鉢から出して根の状態を確認してください。
では、どれを選ぶか
ここからは、次に買うときの話です。
粒の大きさで決まること
| 粒の大きさ | 空気の通り道 | 水もち | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 大粒(12mm前後) | 広い | 少ない | 鉢の底、大きな鉢 |
| 中粒(6mm前後) | ふつう | ふつう | 基本。迷ったらここ |
| 小粒(3mm前後) | せまい | 多い | 小さな鉢、種まき、挿し木 |
細かいほど水もちが良くなり、そのぶん空気の通り道はせまくなります。
根腐れを何度もくり返しているなら、いま使っているものより一段粗いものに変えるのが、いちばん早い手です。
「硬質」はどう考えるか
崩れにくさを求めて「硬質」と書かれたものを選ぶ人は多いと思います。ここは正直に書きます。
「硬質」に、国が決めた基準や定義は見当たりませんでした。先ほど書いたとおり、赤玉土は品質表示のきまりの対象に入っていません。硬さを名乗るための決まりもない、ということです。
そして硬さや崩れにくさを比べられる数字は、メーカーが公開している資料の中にも見当たりませんでした。公の試験報告、学会の雑誌、メーカーの技術資料まで探した範囲での話です。
つまり「硬質」は、買う前に数字で確かめられる言葉ではありません。同じ「硬質」でも、作っているところによって中身がちがう可能性があります。
それでも硬質を選ぶ意味はあります。崩れるまでの時間を買っている、という考え方です。植え替えの回数を減らしたい鉢なら、硬質タイプの赤玉土は割高でも見合うことがあります。
「三本線」の意味や、硬質と普通で何がちがうのかは、こちらで詳しく書いています。
【硬質赤玉土】普通との違い|「三本線」の正体と、崩れるまでの時間で選ぶ
赤玉土は、多すぎてもいけません
赤玉土だけで植えれば水はけが良くなる。そう思いたくなりますが、そうとは限りません。
千葉県の試験で、鉢の土の配合を変えてシクラメンを育てた記録があります。そこに、こんな注意書きがありました。
ピートモスの割合が極端に多いと過湿になりやすい
これはピートモスの話です。けれどもひとつの材料に寄せると、その材料の弱点がそのまま出るという点は、赤玉土でも同じです。
赤玉土だけの鉢は、粒が崩れはじめた瞬間に、逃げ場がなくなります。支えてくれるものが何も入っていないからです。
- 赤玉土だけで植えない
- 水はけを支える側(軽石・パーライト)と、水もちを支える側(腐葉土)を混ぜる
- 鉢が浅いときほど、粗い材料を増やす
どれくらいの割合で混ぜるかは、鹿沼土の記事で数字を出して整理しています。7対3の考え方は、赤玉土でもそのまま使えます。
【鹿沼土】配合は7:3が最適|単体ではうまく育たない理由と、失敗しにくい土の作り方
最低限の対策

- 使う前にふるう
細かい粉を落とすだけで、すき間が大きく改善する。目の細かいアミが付いたふるい(2〜3mm)を使う。 - 植え付け時に押し固めない
土を入れた後は鉢を軽くトントンと叩いて定着させる。強く押さない。 - 古い土は、年数ではなく状態で見る
鉢の重さ、表面の粉、水の引き。この三つで判断する。
粉が増えていたら、ふるって粒だけ戻すか、新しいものに入れ替える。
これだけで空気の通り道は大きく改善する。配合による安定化は次の記事で解説します。
【赤玉土】正しい使い方と配合|植物・環境別に失敗しない選び方
まとめ
赤玉土は「水が速く抜ける土」ではありません。水と空気のバランスを保つ土です。
粒の構造が崩れると、水が残り、空気が消えます。根は酸素を失い、機能しなくなります。
「水はけが良い土なのに根腐れする」のは、矛盾ではありません。水はけの良さを作っていた構造が壊れた。その結果として、根腐れが起きています。
対策の入口は単純です。使う前にふるい、押し固めず、古くなったら交換する。この三つが、構造を維持する基本です。
粒が崩れる → すき間が細かい粉で埋まる → 水が残り、空気が消える → 根が酸素を失う。
→ これだから、水はけが良かったはずの土で根腐れが起きます。
明日からできることを、3つだけ挙げておきます。
- 袋を開けたら、使う前にふるいにかける。目の細かいもの(2〜3mm)で粉を落とすだけで、すき間のふさがり方が変わります。
- 土を入れたあと、指で押し固めない。鉢を軽くトントンと叩いて落ち着かせます。強く押すと、すき間が初日からつぶれます。
- 鉢を持ち上げて、重さで判断する。水やりから2〜3日たっても重いままなら、使った年数に関係なく替えどきです。何年で崩れるかを示した記録は、探しても見当たりませんでした。
参考文献
- 近藤昭彦「第3回 土壌水」地表動態学概論(千葉大学)
http://www.cr.chiba-u.jp/lab/Kondoh-laboratory/edu/lec/hydrology/hydrology_1_No03.pdf - 一般社団法人自然共生社会再生機構(PRA)「団粒構造とは」
http://pra.or.jp/farm/farm038.html - 高錫九・矢橋晨吾・雨宮悠「団粒性用土「赤玉」の水分保持機能について」
造園雑誌55(5), 145-150(1992年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila1934/55/5/55_5_145/_article/-char/ja - 農林水産省「土壌改良資材品質表示基準」
(昭和59年農林水産省告示第2002号)
https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000035.html - 長谷川周一「作物の水・酸素要求に対する土壌の供給力」
土壌の物理性 第69号, 55-66(1994年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssoilphysics/69/0/69_55/_pdf/-char/ja - 千葉県農林総合研究センター「輸出用鉢植木の培養土の選定」(2019年)
https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/shikenkenkyuu/documents/42r1-40.pdf - 千葉県農林総合研究センター「培養土に腐葉土または赤土を用いないシクラメン栽培技術の確立」(2016年)
https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/shikenkenkyuu/documents/h28_28.pdf - 奈良県「8−3.物理的防除」
https://www.pref.nara.lg.jp/documents/7484/8-3_physical_control.pdf - Whipker, B.E. & Veazie, P.「Do Taller Pots Hold More Water?」
e-GRO Alert 13(24), ノースカロライナ州立大学(2024年)
https://www.e-gro.org/pdf/2024-13-24.pdf
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