【ゼオライト】肥料が流れ出さない理由|イオンをつかんで放す仕組み

灰色っぽい岩の表面に、大小さまざまな穴が無数に開いている多孔質な岩肌

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商品を紹介する場合がありますが、内容は独自の調査にもとづいています。

「肥料をあげているのに、水やりのたびに養分が流れ出ている気がする」

そんな感覚を持ったことはありませんか。

鉢植えの水やりは、土の上からたっぷり水を注ぎ、鉢底の穴から余分な水を外へ逃がす作業です。この「通り抜けていく水」は、実は肥料の成分も一緒に運び去っています。とくに赤玉土やパーライトを中心にした、水はけの良い配合ほど、この流れ出しは大きくなります。

この流れ出しを抑える資材として名前が挙がるのが、ゼオライトです。観葉植物の用土だけでなく、水槽の底砂や猫砂にも使われている、あの灰色っぽい粒のことです。

多くの人は、ゼオライトを「水はけをよくするための軽い砂利」だと考えています。もちろん、粒と粒のあいだにすきまができて通気性が良くなるのも本当です。ただし、それだけでは説明できないことがあります。ゼオライトは、わざわざ国の基準で土壌改良資材に指定されている資材だからです。

実は、ゼオライトの粒の中には、目には見えないレベルで養分をつかまえて、必要なときに手放す、化学的なしくみが隠れています。

この記事を読むと、ゼオライトが「土壌の保肥力の改善」という効果で国に指定されている理由が分かります。同じように保肥力を持つと言われるバーミキュライトやパーライトと、何が違うのかも区別できるようになります。

目次

ゼオライトってなに?

ゼオライトは、日本語では「沸石(ふっせき)」と呼ばれる鉱物です。火山灰が海底や湖底に積もり、長い年月をかけて結晶化してできた岩石(凝灰岩)の中に含まれています。栃木県の大谷石(おおやいし)も、ゼオライトを含む凝灰岩の仲間。

結晶の内部は、アルミニウムとケイ素の原子が酸素を介してつながった、骨組みのような立体構造です。この骨組みの中には、分子1つぶんほどの太さのトンネルが無数に通っている。そこに、水分子と電気を帯びた粒子(イオン)が入り込んでいます。

全体で見ると、結晶のすみずみまで無数の穴が開いています。大きさは数十から数百ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)ほどです。肉眼ではまず見えません。この穴の多さが、ゼオライトを「多孔質(たこうしつ)」な鉱物にしています。

日本では主に栃木県などで、クリノプチロライトという種類のゼオライトを含む凝灰岩が採れます。輸入頼みの資材ではなく、国内でも採れる鉱物です。

なぜ肥料を「つかんで放さない」のか

ただ穴が開いているだけでは、養分をつかまえておくことはできません。ゼオライトには、もうひとつ仕掛けがあります。結晶の表面には、目には見えないほど小さな範囲で、マイナスの電気を帯びた場所が無数にあるのです。

このマイナスの電気に引き寄せられるのが、水に溶けた肥料の成分です。肥料の成分の多くは、プラスの電気を持つ粒子(陽イオン)でできています。アンモニウムイオンやカリウムイオンが、その代表格。プラスとマイナスが引き合って、養分はゼオライトの結晶にくっつきます。

この「養分をつかまえておける量」を数値にしたものが、陽イオン交換容量(CEC)です。数字が大きいほど、多くの養分をつかまえておけることを意味します。

家庭用の浄水ポットを使ったことがあるかもしれません。ポットの中のろ過剤には、イオン交換樹脂と呼ばれる粒が入っています。水の中のじゃまなカルシウムイオンをつかまえる代わりに、ナトリウムイオンを手放す、という交換をしている。ゼオライトの結晶の中でも、これと似たイオンの受け渡しが起きています。

つかまえたイオンは、結晶に固く接着されているわけではありません。土の中を別の陽イオンが通りかかると、場所を明け渡して入れ替わる「陽イオン交換」が起こります。この出入りのしやすさこそが、ゼオライトが養分を出し入れするしくみの正体です。

これだからこうなる
結晶の表面にマイナスの電気を帯びた場所がある

目には見えないほど小さな範囲で、電気を帯びている

これだからこうなる
プラスの電気を持つ養分イオンが引き寄せられる

アンモニウムイオンやカリウムイオンが結晶の表面に吸着される

これだからこうなる
水が通り抜けても、イオンは流されにくい

電気の力で結晶の表面にとどまっているため、水と一緒には流れ出さない

これだからこうなる
別の陽イオンが近づくと、場所を明け渡す

陽イオン交換によって、養分が少しずつ土の中へ放出される

だから、ゼオライトを混ぜた土は、水やりのたびに養分が一気に流れ出すのではなく、少しずつ効き続けます。

同じ「保肥力」でも、資材によってつかみ方はまるで違う

「保肥力」という言葉は、バーミキュライトやパーライトの説明でも見かけます。ところが、その中身はゼオライトとまったく違います。

台所で使う水切りネットを思い浮かべてください。網目より大きい具材は、網目に引っかかって外に出ていきません。具材を化学的につかまえているのではなく、物理的に通り道をふさいでいるだけ。

バーミキュライトが養分を抱え込むしくみは、これに近いものです。雲母(うんも)という鉱物を焼いて作られたバーミキュライトは、層と層のすきまに肥料を物理的に抱え込みます。農林水産省の資料でも、バーミキュライトは「CECは高くないが、肥料を物理的に吸蔵する能力が高い」と説明されています。層のすきまの割合(孔げき率)は、90%以上にもなります。粒の大きさで使い分ける具体的な配合は、バーミキュライトの記事で扱っています。

パーライトはさらに違います。真珠岩や黒曜石を高温で発泡させて作るパーライトは、CECもりん酸を吸着する力も小さいままです。化学的に養分をつかまえる力は、ほとんどありません。保水力の大きさで肥料養分を抱え込んでいるにすぎず、化学的な改善効果は乏しいとされています。

同じ「肥料を長持ちさせる」という結果でも、つかまえ方は違います。ゼオライトは結晶が持つ電気の力で化学的につかまえ、バーミキュライトとパーライトは主にすきまに物理的に抱え込みます。仕組みが違うので、効き方の質も違ってきます。

ゼオライトを入れるとどうなる?

花壇用の苗の培養土にゼオライトや木炭の砕いたものを混ぜて、流れ出す養分の量を調べた研究があります。ゼオライトまたは木炭を10%混ぜると、流れ出る養分が減ることが分かりました。減っていたのは硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ、肥料の窒素成分のひとつ)です。

流れ出しは、植え付けてから7日目あたりから始まり、28日目前後まで続いたと報告されています。水やりのたびに少しずつ流れ出ていく、という感覚は、この実験結果とも一致します。ただし、ゼオライトが直接つかまえているのはアンモニウムイオンのような陽イオンです。硝酸イオン自体はマイナスの電気を帯びているため、陽イオン交換では直接つかまりません。アンモニウムイオンが保持されることで、結果として硝酸態窒素の流れ出しも減った、という間接的な関係です。

ゼオライトはそれ自身が塩基(アルカリ性の成分)を含んでいます。そのため、酸性に傾いた土を弱める効果も期待できます。加えて、りん酸を吸収する力が低いという性質もあります。りん酸を強く固定してしまう黒ボク土に大量に施用すると、かえってりん酸の肥効を高める効果も見込めます。りん酸を「固定する」土に、りん酸を「固定しにくい」資材を足す。埋もれていたりん酸を、作物が使いやすくする、逆手にとった使い方です。

効果に気づきやすい場面

ゼオライトの効果は、どんな土にも同じように現れるわけではありません。

赤玉土やパーライトを中心にした、粒のあいだにすきまが多く水はけの良い配合ほど、養分は水と一緒に流れ出しやすくなります。こうした配合で、水やり後に肥料が抜けてしまっている感覚があるなら、ゼオライトを足す意味は大きくなります。

黒ボク土をベースにした培養土で、りん酸を含んだ肥料の効きが悪いと感じる場合も、同じ原因が働いているかもしれません。原因は、りん酸固定。

逆のケースもあります。腐葉土のように腐植そのものが高いCECを持つ用土を、すでに十分な量使っている場合です。ゼオライトを足しても、変化を感じにくいことがあります。CECの取り合いは、すでに保肥力の高い土ほど見えにくくなるからです。腐葉土そのもののCECや酸度については、腐葉土の記事にまとめています。

では、どれを選ぶか

ゼオライト・バーミキュライト・パーライトは、どれも「保肥力」や「土壌改良」という言葉で語られます。しくみを並べると、違いがはっきりします。

資材保肥のしくみCEC(陽イオン交換容量)主な効果
ゼオライト化学的(結晶によるイオン交換)高い(栃木県産の実測値で69〜155 meq/100g)保肥力の改善・酸性の矯正・黒ボク土でのりん酸肥効増進
バーミキュライト物理的(層のすきまに吸蔵)高くない通気性・保水性の改善、肥料の物理的な吸蔵
パーライトほぼ無し(保水力による吸蔵)小さい保水性の改善が主。化学的な改善効果は乏しい

実際に流通しているゼオライト資材は、粒の大きさによって使い分けられています。土に混ぜ込んで使うなら細かい粒。鉢の表面に敷く化粧砂や、鉢底の水はけ層として使うなら大きめの粒。メーカーの技術資料でも、粒度ごとに用途が分けられています。

混ぜ込む量は、次の節で触れる実験結果もふまえて、控えめな割合から試すのが無難です。

使うときの注意

花壇用の培養土を使った実験では、ゼオライトや木炭を10%混ぜても苗の生育に悪影響はありませんでした。一方、20%以上を混ぜると、ビンカ(日々草)の生育が抑制されたと報告されています。混ぜすぎると、根の呼吸や水はけのバランスを崩す可能性がある、ということです。土全体に対して1〜2割程度を目安に、様子を見ながら量を調整するのが安全です。

粉状に近いゼオライトは、袋から出すときに細かい粉が舞うことがあります。窓を開けて換気するか、気になる場合はマスクをつけて作業すると安心です。

肥料が長く効く、という結果は同じでも、そこにたどり着くしくみはまったく別です。水に溶けにくいから長持ちするものもあります(→ マグァンプKの記事)。ゼオライトのように、いったんつかんだ養分を手放さないことで長持ちするものもあります。どちらも「長く効く」という同じ言葉で語られますが、中身は別のしくみです。

まとめ

ゼオライトは、水はけをよくするだけの「軽い砂利」ではありません。

結晶の中にできたマイナスの電気の場所が、水に溶けた養分イオンを引き寄せてつかまえます。別のイオンが近づくと、入れ替わりで手放します。この陽イオン交換こそが、ゼオライトが「土壌の保肥力の改善」という効果で国に指定されている理由です。

結晶がマイナスに帯電している → 養分イオンが引き寄せられてつかまる → 水が通り抜けても流されにくい → 別のイオンとゆっくり入れ替わりながら養分が放出される。

  1. 赤玉土やパーライト中心の、水はけの良い配合を使っているなら、ゼオライトを土の1〜2割ほど混ぜてみる
  2. 黒ボク土をベースにした培養土でりん酸の効きが悪いと感じるなら、ゼオライトを施してりん酸の肥効を引き出す
  3. 混ぜる量は2割を超えないようにし、粉塵が気になるときは換気しながら作業する

参考文献

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この記事を書いた人

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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