【マグァンプK】なぜ1年効くのか|水に溶けにくいから長持ちするしくみ

手のひらに乗せた白い粒状の緩効性肥料と、マグァンプKのパッケージ

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「植え替えのときに白い粒を土に混ぜたけれど、あれは結局、何をしているのだろう」

そんな経験はありませんか。

袋には「約1年間の効きめ」と書いてあります。しかし鉢の土には、水やりのたびに水が通り抜けていきます。粒はその水に洗われ続けているはずです。それなのに1年ももつ、というのは不思議な話です。

多くの人は、「肥料は水に溶けて、根に吸われるもの」と考えます。もちろん水に溶ける肥料もあります。ただ、それだけでは説明できない肥料があります。マグァンプKの粒は、水に溶けにくいように作られています。

実は裏側には、「わざと溶けにくくしておいて、植物の側に溶かさせる」というしくみが関係しています。

この記事を読むと、白い粒が1年効く理由が分かります。小粒・中粒・大粒のどれを買えばいいのかも、自分で判断できるようになります。

目次

マグァンプKってなに?

マグァンプKは、植え替えや植え付けのときに土へ混ぜ込んで使う、粒状の肥料です。メーカーはハイポネックスジャパンで、種類としては化成肥料にあたります。メーカーによれば日本での発売は1966年で、長く売られている商品です。

袋に書かれている成分は、大粒・中粒・小粒のどれも同じで、N 6-P 40-K 6-Mg 15。窒素(チッソ)が6、リン酸が40、カリが6、苦土(マグネシウム)が15という意味です。

手のひらに乗せた白い粒状の緩効性肥料と、マグァンプKのパッケージ
このブログで使っているのは中粒です。袋には「緩効性肥料」「土に混ぜこむ元肥」と書かれています。

数字を見ると、リン酸だけが飛び抜けて多いことに気づきます。花や実をつけるときに多く必要になる成分です。逆に窒素は6しかありません。葉をどんどん茂らせるための肥料ではない、ということです。

ここで注目したいのは、成分の数字ではなく、その手前に書かれた言葉のほうです。業務用の袋の表示では、「く溶性リン酸 40.0」「く溶性カリ 6.0」「く溶性苦土 15.0」となっています。

この「く溶性」が、この記事の本題です。

「く溶性」はどういう意味か

ここが今回の記事でいちばん大事な部分です。

日本には、肥料の中身を表示するときのルールを定めた法律があります。かつて肥料取締法と呼ばれていた、肥料の品質の確保等に関する法律です。この法律にもとづく資料では、成分の書き方が次のように決められています。

表示定義かみくだくと
水溶性水に可溶の成分水に溶ける
く溶性2%クエン酸水溶液に溶ける成分水には溶けないが、うすい酸には溶ける
可溶性0.5mol/L 塩酸等に溶ける成分もっと強い酸になら溶ける

クエン酸は、レモンやみかんの酸っぱさのもとになっている酸です。つまり「く溶性」とは、水では溶け出さないけれど、うすい酸に触れれば溶ける成分だ、という意味になります。

実際に測るときのやり方も決められています。国の検査機関がまとめた肥料分析法では、クエン酸を溶かした液を水で5倍に薄めて使います。これが2%のクエン酸液です。この液を30℃に保ったまま浸け込み、溶け出した量を測ります。

この形の成分が何によって溶けるのかも、公的な資料に書かれています。三重県が農家向けに出している肥料の手引きは、肥料の成分には水にすぐ溶けるもののほかに「作物の根から分泌される有機酸によって溶解して吸収されるもの」があると説明しています。そして「有機酸によって溶解され吸収される成分は、水溶性に比べその肥効は緩効的です。緩効的な成分は、2%クエン酸溶液を用いた溶解法(く溶性成分)などで評価されます」と続けています。

有機酸というのは、クエン酸やリンゴ酸のような、食べ物にも含まれている弱い酸のことです。それを植物の根が出しています。

試験でクエン酸を使うのは、根が出す酸で溶ける分を見立てるためだ、ということです。

身近な例が、卵の殻です。卵の殻を水に一晩つけておいても、形はほとんど変わりません。ところが同じ殻をお酢につけると、泡を出しながら溶けていきます。水では動かないのに、酸には反応する。マグァンプKの粒も、水と酸に対して、これと似た振る舞いをします。

だから水やりのたびに全部が流れ出てしまうことがありません。

その酸は、誰が出すのか

では、鉢の中で誰がクエン酸を用意するのでしょうか。ここで少し不思議な話をします。用意するのは、植物自身です。

土の中のリンは、もともと植物が使いにくい形で存在しています。日本土壌肥料学雑誌の総説は、リンは土の鉱物にくっついて動かなくなりやすい、と説明しています。だから肥料をやっても、そのすべてが吸われるわけではありません。土が酸性のときはアルミニウムや鉄と、アルカリ性のときはカルシウムと結びついて、溶けにくいかたまりになってしまうためです。

植物はこれに対抗する手段を持っています。根から酸を出すのです。日本農芸化学会の解説によれば、根から出される酸の主なものはクエン酸、リンゴ酸、シュウ酸。どれも果物や食べ物に含まれる、身近な酸です。これらの酸には、金属をつかまえて離さない性質があります。リン酸と結びついていた金属のほうをつかまえてしまうので、リン酸が解き放たれます。

雪の上に手のひらを当てると、当てたところだけが溶けていきます。根が酸を出しているのも、これと同じで、根のまわりだけです。同じ解説では、根の表面からおよそ2mmの範囲を根圏と呼び、そこで溶けたリン酸が増える、と説明されています。

ただし、この分泌のしくみを詳しく調べた研究は、リンが足りない条件に置かれた植物や、ルーピンのようにその働きが目立つ植物を対象にしたものが中心です。ふつうに育っている観葉植物の鉢の中で、どれくらいの量の酸が出ているのかまでは分かっていません。根が酸を出してリン酸を溶かす、という道すじがある、というところまでが確かな話です。

メーカーの説明も、これと同じ向きです。ハイポネックスジャパンは、粒の溶け方を2段階で説明しています。まず水に溶ける成分が水やりで溶け出す。次に水に溶けない成分が、土の中の微生物や根から出る酸によってゆっくり溶け出す、というものです。

ここで、よく聞く言い方をひとつ整理しておきます。「根から出る酵素で溶ける」という説明を見かけることがあります。ただ、酵素と酸は役割が違います。根は酵素も出していますが、その酵素の仕事は、落ち葉のような有機物にくっついたリンを切り離すことです。金属と結びついて固まったリン酸をほどくのは、酸のほうです。植物は両方を出していて、担当している仕事が別だ、ということになります。

なぜ粒の大きさで効く期間が変わるのか

マグァンプKには大粒・中粒・小粒があります。成分はどれも N 6-P 40-K 6-Mg 15 で同じです。それなのにメーカーが表示している効きめの長さは、次のように違います。

粒の大きさメーカー表示の効きめメーカーが挙げている使いどころ
小粒約2ヵ月間草花・野菜の種まき、苗づくり
中粒約1年間植えつけ・植えかえ時の元肥
大粒約2年間花木や果樹、バラや宿根草、洋ラン、山野草など植えかえの少ない植物

中身が同じで、大きさだけが違う。それで2ヵ月と2年に分かれます。

かき氷を思い浮かべてください。細かい氷はコップの中ですぐに溶けてしまいます。同じ量の氷でも、大きなかたまりのままなら、いつまでも残っています。中身はどちらも同じ水です。違うのは、外側の水に触れている面積だけです。

肥料の粒も同じで、溶けるのは水や酸に触れている表面からです。粒が大きいほど、中身の重さに対して表面は小さくなります。だから溶け終わるまでに時間がかかります。

農林水産省の資料も、この見方を裏づけています。水に溶けにくくした緩効性の窒素肥料について、その効き方は水分やpH、粒の大きさなど、多くの条件に左右されると書かれています。粒の大きさが、効き方を決める要素のひとつに挙げられている、ということです。

植え替え用の鉢の土に白い粒状の肥料を混ぜ込んでいる様子
植え替えのとき、鉢の土に粒を混ぜ込みます。根が伸びていく範囲に散らばるようにします。

「ゆっくり効く」にも種類がある

肥料の袋には「緩効性」という言葉がよく書かれています。ただ、ゆっくり効かせるやり方は一つではありません。農林水産省の資料は、水に溶けにくくしたタイプと、膜で包んだタイプを分けて説明しています。そこに、微生物が分解する有機質の資材を並べると、次のように整理できます。

ゆっくり効かせるやり方溶け方を決めているもの
水に溶けにくい化合物にする水分・pH・粒の大きさなどマグァンプKのような、く溶性で保証された肥料
粒を膜で包む(被覆肥料)主に温度と湿度コーティング肥料
微生物に分解させる微生物の働き(温度・空気・水分に左右される)堆肥・腐葉土など

同じ資料には、被覆肥料は温度と湿度に影響される程度である、という趣旨の記述があります。農研機構も、被覆尿素肥料からの窒素の溶出速度は肥料の銘柄や地温によって異なる、と説明しています。膜で包むタイプは、地面の温度が上がると溶け出しが早まるということです。

三つ目のやり方が、堆肥や腐葉土です。こちらは微生物が有機物を分解して、はじめて養分になります(→牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の違い)。分解が終わっていない資材を鉢に入れると、鉢の中で発酵の続きが起きます。腐葉土の記事で扱った未熟な資材の問題(→腐葉土のpH・栄養素)も、根は同じところにあります。

マグァンプKは一つ目のやり方です。膜も微生物も使わず、成分そのものを溶けにくい形にしてあります。

元肥として混ぜ込んでも根が傷みにくい理由

植え付けのときに肥料を土全体に混ぜ込む、という使い方には、本来リスクがあります。根が肥料の粒に直接触れるからです。

土の中の肥料が濃くなると、根は水を吸えなくなります。園芸で肥料焼けと呼ばれる現象です。

きゅうりに塩をふって少し置くと、表面に水がにじんできます。塩の側の濃度が高いので、きゅうりの中から水が引き出されるためです。根のまわりの土が濃くなったときにも、これと同じ向きの力が働きます。

農林水産省の資料は、この濃さを電気の通しやすさで測る方法を示しています。溶けている成分が多いほど、土の水は電気を通します。その値から、根に水を吸わせまいとする力の強さを見積もることができます。

どれくらいの濃さで音を上げるかは、植物によって違います。同じ資料には、なす、ピーマン、トマト、きゅうり、いちごの順に弱くなる、と書かれています。いちごの苗床では、ごく薄い濃さでも生育に障害が出る、とも示されています。

水に溶けにくい肥料は、一度に土の水を濃くしません。これが、植え付けと同時に混ぜ込んでも使いやすい理由です。同じ資料は、膜で包んだ被覆肥料についても、根が触れても周りの水を濃くしないので、植え付けのときに一作分をまとめて入れられる、と説明しています。溶け方を抑える手段は違っても、根にとっての利点は同じ方向を向いています。

ただし、これは「いくら入れても平気」という意味ではありません。袋に書かれた量を守るという前提での話です。

では、どれを選ぶか

小粒・中粒・大粒は、成分が同じで効く長さだけが違います。選ぶ基準は一つに絞れます。次にその鉢をいじるのはいつか、です。

こういう場合選ぶ粒理由
1〜2年ごとに植え替える観葉植物・鉢花中粒効きめの約1年が、植え替えまでの間隔とかみ合う
種まき・さし芽・苗づくり小粒苗を植え替えるまでの短い期間だけ効けばよい
花木・果樹・バラ・洋ランなど、数年そのまま育てる鉢大粒植え替えが少ないので、長く効く粒のほうが合う
すでに植えてある鉢に足したい小粒、または追肥用の肥料中粒・大粒は土に混ぜ込む元肥。混ぜられない鉢には、ばらまいて使える小粒か、別の追肥を選ぶ

迷いやすいのは小粒と中粒です。メーカーは小粒を「株のまわりにばらまく」使い方で案内し、中粒と大粒は「土に混ぜ込む」使い方で案内しています。混ぜ込めるかどうかで決めると、まず外れません。

このブログの植え替えで使っているのはマグァンプK 中粒です。観葉植物を1〜2年で植え替えるなら、これが基準になります。ただ、鉢の数が少ないうちは、大きな袋を買っても使い切れずに残ります。まず小さい袋から始めて構いません。

使うときに気をつけたいこと

しくみが分かると、注意点も理由から説明できます。

  • 植え替えのときは、表面に置くのではなく土に混ぜ込む。溶かしているのは根が出す酸で、その働きが届くのは根のまわりだけ
  • 窒素は6しかない。葉の色が薄いときは、この肥料を足すのではなく、窒素を含む追肥で補う
  • 土そのものを変える資材ではない。水はけや通気を良くしたいなら、用土の配合で解決する
  • 袋に書かれた量を守る。溶けにくい肥料でも、量が多ければ土の水は濃くなる
  • 効きめの表示はあくまで目安。土の乾き方や置き場所によって、溶け方は前後する

植え替えの間隔と効きめの長さがずれると、途中で切れるか、余ったまま次の植え替えを迎えるかのどちらかになります。粒を選ぶときに植え替えの予定から逆算するのは、そのためです。

まとめ

マグァンプKは、「水に溶けて効く肥料」ではありません。

成分はわざと水に溶けにくい形にしてあります。法律の表示では「く溶性」、つまり2%のクエン酸に溶ける成分として保証されています。そのクエン酸にあたる酸を出すのは、植物の根です。根は自分の周りだけを溶かし、必要な分を吸い上げます。

水に溶けにくい → 水やりで流れない → 根が酸を出したところだけ溶ける。粒が大きい → 表面が小さい → 溶け終わるまで時間がかかる。

→ これだから、粒の大きさは「次の植え替えまでの時間」で選ぶ。

最後に、今日からできることをまとめます。

  • 肥料の袋の成分表示を見て、「水溶性」「く溶性」のどちらで書かれているかを確かめる
  • 手持ちの鉢を、次に植え替える予定の年数で分けてみる。1〜2年なら中粒、数年そのままなら大粒
  • 次の植え替えのときは、粒を土の表面に置くのではなく、根が伸びる範囲に混ぜ込む

参考文献

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この記事を書いた人

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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