【黒土】使い方と仕組み|水持ちが良いのに乾かなくなる理由

有機物を多く含んだ黒い土のクローズアップ。細かい粒に枝や葉の断片が混ざっている

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黒土は、「水持ちが良い土」として使われることが多いです。

最初はふかふかしていて、水もしっかり残る。植物も元気に見える。

だから、

「良い土なんだな」

と思いやすいです。

しかし使っているうちに、

  • なかなか乾かない
  • 表面だけ乾く
  • 中がずっと湿っている
  • 根腐れする

こうした違和感が出てきます。

一方で黒ぼく土は、

  • 通気性がある
  • 排水性が良い

とも言われます。

「空気が通る土なのに、なぜ蒸れるのか?」

このズレの原因は、土の構造が変わるからです。

黒土は最初、水と空気を両立しやすい構造を持っています。しかし鉢の中では、その構造が徐々に崩れていきます。

すると空気の通り道が減り、水が抜けにくくなります。

この記事では、その仕組みを整理します。


目次

黒土ってどんな土?

黒土は、関東地方に分布する火山灰土壌の表土(腐植層)のことです。北海道立総合研究機構は、園芸用土としての黒土をこう定義しています。

ここで大事なのは「表土」という言葉です。火山灰が積もった土地の、いちばん上の層を指しています。

なぜ黒いのか。落ち葉や根が分解されてできた有機物(腐植)が、長い年月をかけてそこに溜まったからです。農研機構は黒ボク土を「有機物が集積して黒い色をしていることが多く、黒くてホクホクしていることから黒ボク土と呼ばれる」と説明しています。

この「ホクホク」が、袋を開けたときのふかふかした感触の正体です。

ちなみに黒ボク土は日本の国土の31%程度を占め、畑の約47%がこの土です。日本の農業を支えている土だと言っていいと思います。

赤玉土とは「同じ場所の、上と下」

ここで、多くの人が混乱するところを整理しておきます。

黒土と赤玉土は、まったく別の土ではありません。同じ火山灰土の、上の層と下の層です。

  • 黒土 → 表土。有機物が溜まった、いちばん上の黒い層
  • 赤土 → その下にある、赤褐色で粘り気のある土
  • 赤玉土 → 赤土をふるいにかけて、大・中・小の粒に揃えたもの

つまり袋の中の赤玉土は、黒土の下から掘り出した土を、粒に揃えた商品です。同じ地層の上下を、別の名前で売っているわけです。

産地によっては、黒土・赤土・鹿沼土が同じ地域で同時に採れることもあります。

この関係がわかると、次の話が理解しやすくなります。

畑では「良い土」と評価されている

意外に思われるかもしれませんが、黒ボク土の物理性は、専門機関から高く評価されています。

農研機構は黒ボク土について、こう記しています。

  • 保水性や透水性が良く、他の土壌に比べて物理性は良好
  • 同じ体積でも重さが軽い(専門的には容積重が小さいと言います)
  • ち密度(土の硬さ)が低く、耕起が容易

水も持つし、水も抜ける。軽くて、耕しやすい。畑の土としては優秀です。

では、なぜ鉢に入れると話が変わるのでしょうか。

なぜ鉢だと乾かなくなるのか

ここが今回の記事でいちばん大事な部分です。

答えは「黒土が悪いから」ではありません。「鉢が畑と違うから」です。

違いは2つあります。

1つ目は、下に土が続いていないことです。

畑では、水は下へ下へと抜けていきます。土が地面までつながっているからです。ところが鉢の中では、底で行き止まりになります。水は底に溜まり、そこから上へ向かって、じわじわと湿った層ができます。

この湿った層は、鉢が浅いほど、全体に占める割合が大きくなります。浅い鉢ほど「いつまでも湿っている」状態になりやすいのはこのためです。

2つ目は、誰も耕さないことです。

畑の黒土が「耕起が容易」と評価されているのは、裏を返せば耕されることが前提だということです。畑では毎シーズン耕され、潰れた構造がほぐされます。

鉢の中では、それが一度も起きません。上から水をかけるたびに、土は少しずつ上から押されて締まっていきます。ふかふかだった構造が、水やりの回数を重ねるごとに詰まっていく。

そして黒土は粒がとても細かく、柔らかく崩れた有機物をたくさん含んでいます。水やりを何度も繰り返すと、土がぎゅっと押し詰められます。すると土と土のあいだのスキマも、ごく細かいものばかりになります。細いスキマほど水を吸い上げる力が強く(毛細管現象と言います。細いストローほど水が高く上がるのと同じです)、水が居座って空気が入れなくなります。

最初はふかふかで水はけも良かったのに、しばらくすると乾かなくなる。この落差が、黒土を鉢で使ったときの違和感の正体です。

鉢の底には行き止まりがあるので、水が下に抜けきれません。畑のように耕すこともないので、使ううちに土が押し固まり、スキマがどんどん細くなって水を吸い込んでしまう。だから、いつまでも乾かないのです。

→ これだから、乾かなくなる。

なお、水はけが良いはずの土でも根腐れが起きる仕組みは、赤玉土が根腐れを起こす理由でも詳しく扱っています。原因の構造は同じです。

もうひとつの弱点:リン酸が効きにくい

黒土にはもうひとつ、知っておくと得をする性質があります。

農研機構は黒ボク土を「リン酸吸収係数が高く」「植物養分として重要なリン酸の吸着力も高い傾向にある」と説明しています。

リン酸を掴んで離さない土、ということです。ただしすべての黒ボク土が同じではありません。ここは後で補足します。

原因は、火山灰が風化してできた粘土鉱物にあります。アロフェンやイモゴライトと呼ばれる、結晶になりきっていない鉱物(専門的には非晶質、あるいは結晶度の弱い粘土鉱物と言います)です。これらがリン酸と強く結びついてしまいます。

リン酸は、花や実をつけるために欠かせない養分です。肥料をやっているのに花つきが悪い、という場合、土がリン酸を先に掴んでいる可能性があります。

この現象は農学の研究テーマにもなっていて、アロフェンを含む黒ボク土と含まない黒ボク土で、リン酸の効き方がどう違うかが調べられています。

ただし、ここまでの話には条件が付きます。

黒ボク土は、含まれる粘土鉱物によって2つのタイプに分かれます。

  • アロフェン質 → アロフェンやイモゴライトを多く含む。国土の19%程度
  • 非アロフェン質 → 結晶のかたちが整った別の粘土鉱物が主体。国土の7%程度

リン酸を強く掴むという話が、特によく当てはまるのはアロフェン質のほうです。

一方、非アロフェン質の黒ボク土には別の注意点があります。農研機構は、塩基が抜けていくとアルミニウムが増えて「強酸性を示す」ようになり、多量の施肥による土壌の酸性化に特に注意が必要だと記しています。

袋に「黒土」とだけ書かれている場合、どちらのタイプかは書かれていません。黒い土をひとくくりにできないということだけ、頭の隅に置いておいてください。

では、どれを選ぶか

ここまでを踏まえて、使い分けを整理します。

黒土赤玉土鹿沼土
正体火山灰土の表土(腐植層)表土の下層の赤土を粒に揃えたもの風化した軽石
細かい(粒に揃っていない)大・中・小にふるい分け済み大・中・小にふるい分け済み
鉢での単用向かないできるできる
庭・花壇向くできるできる
向いている使い方地面に混ぜて土をふかふかにする鉢の基本用土酸性を好む植物の基本用土

結論はシンプルです。黒土は、鉢に単体で入れる土ではありません。地面に使う土です。

庭の植え込みや花壇なら、黒土の長所がそのまま活きます。下に土が続いているので水は抜けますし、掘り返す機会もあります。値段も安く、量が必要な場所に向いています。

鉢やプランターで使いたい場合は、単用を避けて、粒の揃った土と組み合わせてください。赤玉土のような粒状の土を主体にして、黒土は補助にとどめるのが安全です。長く植え替えない鉢なら、崩れにくい硬質タイプの赤玉土を主体にすると、黒土が締まっても土全体の隙間が保たれます。腐葉土を加えると、構造が締まりにくくなります。

買うときに、ひとつ注意点があります。

「黒土」という名前で売られているものには、品質の幅があります。本来の黒土は火山灰土の表土ですが、産地や精製の程度によって中身はさまざまです。安いものほど量が多く入っていますが、鉢に使うつもりなら、粒の状態を確かめてから買うことをおすすめします。

ホームセンターで比べるときは、袋の上から握ってみてください。指の跡がそのまま残るほど細かいものは、鉢の中でよく締まります。すでに買ってしまった黒土を鉢に使いたい場合は、園芸用のふるいで細かい粉を落としてから混ぜると、締まり方がいくらか和らぎます。

まとめ

黒土は「水持ちが良い土」でも「水はけが悪い土」でもありません。置かれた場所によって、どちらにもなる土です。

要点を整理します。

  • 黒土は関東の火山灰土の表土(腐植層)。黒いのは有機物が溜まっているから
  • 赤玉土はその下の層の赤土を粒に揃えたもの。上下の関係にある
  • 畑では保水性・透水性ともに良好と評価されている。ただし耕されることが前提
  • 鉢では下に逃げ場がなく、誰も耕さないため、水やりのたびに締まっていく
  • 腐植が多く粒が細かいので、締まると細かい隙間ばかりが残り、空気が入らなくなる
  • リン酸を強く掴むため、施肥しても効きにくいことがある

鉢は下が行き止まりで、しかも誰も耕しません。だから使ううちに土が押し固まり、スキマが細くなって水を抱え込みます。流れで書くとこうなります。
下に逃げ場がない → 耕されない → 締まる → 細かいスキマだけが残る → 乾かない。

→ これだから、こうなる。

鉢で黒土を使って失敗したなら、それは「悪い土を選んだ」のではなく、「畑で使うべき土を、鉢に置いてしまった」ということです。庭や花壇に戻してあげてください。そこでは本来の、優秀な土として働いてくれます。


参考文献

・農研機構 日本土壌インベントリー「黒ボク土」 https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/explain/D.html

・農研機構 日本土壌インベントリー「アロフェン質黒ボク土」 https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/explain/D6.html

・北海道立総合研究機構 農業研究本部「北海道の耕地土壌Q&A Q.15 園芸用品の土」 https://www.hro.or.jp/agricultural/center/research-topics/soilqamain/q15.html

・伊藤豊彰・木川直人・三枝正彦「黒ボク土におけるリン酸収着と土壌リン酸の可給性」ペドロジスト55巻2号(2011年)84-88頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pedologist/55/2/55_KJ00007905570/_article/-char/ja/

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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