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ある日の買い物で立ち寄った道の駅で、くん炭を発見して購入しました。
買ってはみたものの、私は使い方がわからず配合に苦戦した経験があります。
・そもそもくん炭ってなに?
・もみ殻はわかるけど、なんで炭にしてるの?
・見た目からして、水はけは良くなりそうだけど理由は?
初心者の頃の私はとりあえず使ってみよう、と適当に配合をしていました。
今だからわかりますが、仕組みを理解せずに使うと植物にとって悪影響になります。
理由は排水性・pH・微生物、この3つが同時に変わる素材だからでした。効率的な効果がある反面、条件が合わないと植物に悪影響が出る素材です。
くん炭の特徴と仕組みを理解して、適切な場面で使用できるようになることが今回の記事のゴールとしています。
では早速、みていきましょう。
くん炭とは?
・土の中にすき間が多い形
・アルカリ性という性質
・土の状態を変える素材
「土のすき間」と「栄養のバランス」を同時に変えるもの、と考えればわかりやすいです。
この性質によって、水はけが良くなり、根腐れは起きにくくなります。
ただし注意点もあります。
条件が合わないとどうなるか
・乾きすぎる
・pHが上がりすぎる
・栄養のバランスが崩れる
つまり、「なんとなく良さそう」で使うと問題が起きて失敗しやすい素材です。
この記事でわかること
くん炭で失敗しやすいのは、初心者の頃の私のように「仕組みを知らない」まま使っているケースがほとんどです。
- 排水性が変わる理由(物理性)
- pHと栄養バランスが変わる理由(化学性)
- 微生物が変わる理由(生物性)
- なぜ失敗するのか(構造的原因)
- 正しい使い方
難しい内容に感じるかもしれませんが、初心者でもわかりやすく表現しています。
排水性が変わる理由(物理性)
くん炭の内部には、無数の小さな穴があいています。
- 空気の通り道ができて根が呼吸しやすくなる
- 水の抜け道ができて水はけが良くなる
- じめじめした状態が続きにくくなるため、根腐れが起きにくくなる
ただし注意点があります。
くん炭の粒が崩れて粉状になると、その穴が埋まってしまいます。
→水はけが改善されるどころか逆に悪化
「入れたのに水はけが悪くなった」という失敗の多くは、ここが原因です。
使う前にふるいで粉を取り除くのはこのためです。
土ふるいは繰り返し使うものなので、錆びないステンレス製のふるいがおすすめです。
参考リンクを貼っておきます。ステンレス製のふるいを見る
pHと栄養バランスが変わる理由(化学性)
くん炭を入れて、土に混ぜると土のpHが上がります。では、pHが上がるとどうなるか。
・くん炭はアルカリ性の素材
・酸性にかたよった土がやわらぐ
・カルシウムやカリウムなどの養分が増えやすくなる
ここまでは良い変化です。ただし、話はここで終わりません。
養分が増えると、今度は別の問題が出てきます。
イオンの競合
カリウム(特に影響が大きい)やカルシウムが増える → マグネシウムが吸収されにくくなる
では、カルシウムやカリウムが増えすぎるとどうなる?
マグネシウムの役割は?
・葉を緑に保つために必要な元素
・不足すると葉が黄色くなり、光合成が弱くなって植物の元気がなくなる
くん炭を入れすぎると、「養分は増えているのに植物が弱る」という逆転現象が起きることがあります。
微生物の数と種類が変わる理由(生物性)
くん炭を土に混ぜると、微生物の環境が変わります。理由は2つです。
① 住処が増える
くん炭には小さな穴がたくさんあります。この穴が微生物の住処になるため、土の中の微生物が増えやすくなります。
② pHが変わる
くん炭はアルカリ性です。土のpHが変わることで、そこで生きやすい微生物の種類も変わります。
この2つによって、土の中のバランスが変わります。人の体と同じで、バランスが崩れると働きも乱れます。結果として、栄養はあるのに植物に届かない状態になることがあります。
よたここで一度整理します。物理性・化学性・生物性、どれも「条件次第で結果が変わる」素材です。では環境に合っていないと何が起きるのか。実際の失敗パターンを見ていきます。
くん炭で起きる失敗
くん炭の失敗は、量ではなく使い方が環境に合っていないときに起きます。
① 乾きすぎる
穴が多い構造のせいで水が抜けすぎて、水分が保てなくなります。特に鉢植えでは影響が出やすいです。
② 根が弱る
pHが上がりすぎてマグネシウムが吸収されにくくなり、葉が黄色くなって植物の元気がなくなります。
③ 水はけが悪くなる(逆転現象)
粒が崩れて粉状になると穴が埋まり、水はけが改善されるどころか逆に悪化します。
良かれと思ってくん炭を入れても、これでは本末転倒です。では、これらの失敗を避けるにはどうすればいいのか。次のセクションで解説します。
くん炭の向き不向きと対応策
くん炭を使うべき場面
このような状態なら、くん炭の出番
・水やり後に土がなかなか乾かない
・根が黒ずんでいて排水を改善したい
→水はけが悪い土や、根腐れが起きやすい環境に有効です。
・pH測定で6以下が続いている
・酸性を嫌う植物の生育が悪い
→土が酸性に傾きすぎていて、酸性土壌を調整したい時に使えます。
くん炭を避けるべき場面
・酸性を好む植物を育てている (ブルーベリーやツツジなど)
・もともと乾燥しやすい環境で管理している
→ くん炭はアルカリ性です。pHは一般的に8〜10程度。植物によっては、入れると環境に合わないこともあります。
・購入時にすでに粒が崩れて粉状になっている
→ 穴が埋まって通気性が落ち、水はけが逆に悪化します。
袋を軽く振ったときに粉っぽい音がする、または袋の底に細かい粉が溜まっている状態であれば、すでに崩れている可能性があります。
失敗を避けるための対応策
pHを調整したい場合 → 酸性資材と組み合わせる
くん炭はアルカリ性のため、そのまま使うと土壌のpHが上昇します。ピートモスや鹿沼土などの酸性資材と混ぜることで、pHの上昇を抑えられます。pHチェックができる土壌酸度計をみる
粒が崩れて粉状になっている場合 → ふるいで微塵を除去する
粒が崩れて微塵が増えると、土の隙間が埋まり通気性が低下します。使用前にふるいにかけて粉を取り除くことで、通気性の低下を防げます。微塵を取り除くふるいを見る
結局のところ、「少量から試す」は本質ではありません。量を減らしても条件が合っていなければ同じ結果になります。pH・粒の状態・水分管理、この3つを整えることが先です。
配合の目安
基本の目安は用土全体の1〜2割程度です。ただし固定の正解はありません。
配合例では赤玉土・鹿沼土・腐葉土を基本にしています。
- 赤玉土→保水と排水のバランスが良い
- 鹿沼土→酸性寄りでくん炭のアルカリを中和しやすい
- 腐葉土→微生物と養分を補う役割
| 条件 | 目安 | 配合例(参考) |
|---|---|---|
| 屋外・雨が当たる環境 | 多め | 赤玉土6:腐葉土2:くん炭2 |
| 室内・水やり管理が必要 | 少なめ | 赤玉土7:腐葉土2:くん炭1 |
| 乾燥を好む植物(多肉など) | 少なめ | 赤玉土7:鹿沼土2:くん炭1 |
| 湿度を好む植物 | 控えめ | 赤玉土6:腐葉土3:くん炭1 |
| pHを抑えたい場合 | 少なめ | 赤玉土6:鹿沼土2:くん炭1 |
| 高温多湿な地域(九州・沖縄など) | 多め | 赤玉土6:腐葉土2:くん炭2 |
| 乾燥しやすい地域(北海道・内陸部など) | 少なめ | 赤玉土7:腐葉土2:くん炭1 |
※配合例はあくまで一般的な目安です。植物・環境・管理によって異なります。
それぞれの地域や日当たり、風の有無などによって植物の反応を見ながら調整していくことが大切です。
くん炭を入れると虫が湧かなくなるって本当?
一部ではアブラムシへの忌避効果があるとする情報もありますが、科学的に十分な検証はされていません。少なくとも今回の記事執筆にあたり、私が探した資料には記載されていませんでした。
ひとつ言えることは、通気性が改善されて過湿が減ることで、虫が発生しにくい環境になることはあります。つまり「虫が湧かなくなる」ではなく「虫が湧きにくい環境になることがある」が正確な表現です。
くん炭の代わりになる素材
くん炭が使えない場面でも、目的に合った素材を選んで同じように用土に混ぜることで、似たような効果が得られます。くん炭を切らしてしまった時にも有効です。
パーライト
効果:排水性・通気性の向上。pHへの影響がほとんどない。
くん炭と違ってアルカリ性に傾かないため、酸性を好む植物にも使いやすいです。
パーライトについてはこちらで詳しく解説しています。
ピートモス
効果:保水性の向上。酸性寄りの素材。
くん炭のアルカリが強すぎる環境の調整にも使えます。
ピートモスについてはこちらで詳しく解説しています。
バーミキュライト
効果:保水性と通気性を同時に確保。初期生育の安定。
発芽や育苗など、根が弱い時期に特に使いやすいです。
バーミキュライトについてはこちらで詳しく解説しています。
この記事のまとめ
くん炭が1番活躍する場面は、「土のすき間」と「栄養のバランス」、そして「微生物環境の変化」を同時に調整したい時です。
こんな症状が出ていたら、くん炭の出番です。
- 水やり後に土がなかなか乾かない
- 根が黒ずんでいる
- 酸性に傾きすぎている
くん炭の効果は
- 排水性の改善
- pHの調整
- 微生物環境の変化
このように分解できます。とはいえ、くん炭でなくても他の資材で個別に代替可能です。個別に使い分けた方が、目的に応じて調整しやすくなるメリットもあります。くん炭だけで3つの効果を期待できますが、環境の調整が難しいというデメリットもあります。
排水性 → パーライト
保水、有機環境 → 腐葉土、ピートモス
初期生育安定 → バーミキュライト
このように分解して設計すれば、くん炭がなくても同等以上の環境は作れます。
くん炭の最大のメリットは、一度に複数の要素を変えられる効率の良さです。
変化が大きい分、読み違えると逆方向に振れます。ここがくん炭の難易度を上げます。特に鉢植えでは分解して使う方が安定するので、地植えメインの方向けの資材だと個人的には考えています。
結論として、くん炭は「あれば便利」な素材ですが、「なくても困らない」素材です。
参考文献
Impacts of rice-husk biochar on soil microbial biomass and… https://www.nature.com/articles/s41598-022-05757-z
Effects of rice husk biochar application on the properties of alkaline… https://pse.agriculturejournals.cz/artkey/pse-201511-0001_effects-of-rice-husk-biochar-application-on-the-properties-of-alkaline-soil-and-lentil-growth.php
もみ殻くん炭の化学性を籾殻と比較する論文 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/73/1/73_KJ00000888648/_pdf
農地土壌の炭素貯留能力を向上させるバイオ炭資材等の開発 https://www.affrc.maff.go.jp/docs/project/pdf/jisseki/2020/seika2020-16.pdf
もみ殻炭の表層局所施用が地温へ及ぼす影響 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/96/5/96_960514/_pdf/-char/ja
もみ殻を活用した発電事業とくん炭の土壌還元による炭素固定 https://j4ce.env.go.jp/casestudy/104
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