【ピートモス】使い方まとめ|乾かすと水をはじく、その理由と対策

ピートモスの劣化対比

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ダイソーで植物を買うと、根元にふわっとした繊維状の土が入っているのを見たことがあると思います。あれがピートモスです。

市販の培養土にも混ざっていることが多く、知らず知らず使っている人も多い用土です。女性にも人気の「軽い培養土」にも多く含まれています。

ただ、なんとなく使っていませんか?性質を知らないまま使うと失敗しやすいのがピートモス。

この記事では、ピートモスがなぜ失敗しやすいのか、どう使えばいいのかを順番に説明します。



目次

ピートモスとは何か

ピートモスはどうやってできるのか

ピートモスは、ロシア・バルト三国・北海道・カナダや北欧などの寒冷地の湿地帯で、ミズゴケなどの植物が長い年月をかけて積み重なり分解されたものです。 ミズゴケなどが土のようになったものを、乾燥・粉砕して作られます。

なぜピートモスを使うのか

ミズゴケ由来の繊維状の構造をしている有機物でできているため、すき間が多い構造をしています。 だから軽い。すき間に水を蓄えつつ同時に空気も通せるため、水と空気を同時に保てます。

さらに養分をためておく力(CEC)も高い。 軽くて、水・空気・養分を同時にキープできるのがピートモスの強みです。とても万能に感じますが、クセもあります。

ピートモスが起こすデメリット

乾いてくると話が変わります。

水分が40〜60%の範囲で段階的に下回ると、繊維の表面が水をはじくようになる。
水をかけても内部まで入らず、表面だけ濡れて終わります。

押し固めると体積が数十%以上縮むこともあり、すき間がつぶれて空気の通り道が失われます。

結果、根の状態が不安定になり根腐れや生育不良につながります。


正しく使うためのポイント

「乾かさず、押し固めない」ことが基本です。

使う前に水を含ませる

ピートモスは乾燥した状態で売られています。
そのまま土に混ぜると、水をはじいて本来の保水力が発揮されません。

バケツにピートモスを入れ、水を少しずつ加えながら手でもみほぐす。 目安としては、握ると固まり、軽く触ると崩れるくらいがベスト。 全体がしっとりしたら使用できます。

一度に水をかけるだけでは中まで浸透しません。 時間はかかりますが、少しずつなじませるのがポイントです。早く浸透させたい場合はぬるま湯を使います。水温が上がると浸透しやすくなるためで、ピートモスの製造業者は20〜30℃を推奨しています。

他の用土と混ぜて使う

単体で長く使い続けると構造が崩れやすくなります。 個人的に単体は非推奨です。
赤玉土やパーライトと混ぜることで、水と空気のバランスが安定します。

強く押し固めない

植え付けるとき、強く押し込むとすき間がつぶれます。 ウォータースペースを確保するために、植え替え時に押し固めがちです。ふんわり置くイメージで植え付けましょう。

圧縮した状態で保管しない

袋の中で長期間圧縮されたままだと、繊維がつぶれます。 開封後はなるべく早めに使い切るのがベストです。使い切れない場合は、ビニール袋などにふんわり入れて小分け後、収納ケースなどで日の当たらないところに置くと劣化しにくいのでおすすめです。これから買うなら、酸度未調整のピートモスは使う量を自分で決められるので、配合を組みたい場合に扱いやすいです。


水につける時間は、どれくらいが正解か

時間を長くしても、あまり意味がありません。効くのは、浸ける前にどれくらい乾いていたかです。

アメリカのノースカロライナ州立大学が、こんな実験をしています。ピートモスを水に浸けて、下から吸わせる。いわゆる腰水です。

浸ける時間を5分から60分まで変え、さらに水の深さと、浸ける前の乾き具合も変えて比べました。

いちばんはっきり出たのは、乾かしすぎたときの結果です。

乾かしすぎると、時間では取り返せない

ピートモス全体の重さのうち、水が3分の1しかない状態。ここまで乾かしたものを、浅い水に浸けました。

吸った量は、ピートモス全体のうち水が占める割合で表します。数字が大きいほど、たくさん吸ったということです。

浸けた時間吸った量(割合)
5分5
60分4

この条件では、5分から60分に延ばしても増えませんでした。水を深くしても、5から9まで動いただけです。

この実験が見ているのは60分までです。それでも、待つほど入るという関係になっていません。乾かしすぎたピートモスに、待つという手は期待できないのです。

湿っていれば、最初の数分でほぼ終わる

逆に、しっかり湿った状態から浸けるとどうなるか。重さの3分の2が水という状態で、水も深く張った場合です。

浸けた時間吸った量(割合)
5分33
60分39

5分の時点で、60分ぶんの8割以上が入っています。吸うときは、はじめの数分で吸っている。

※同じ実験の中で比べるための値です。大小の関係だけを見てください。

効いているのは、時間ではない

2つの表を並べると、はっきりします。ただし水の深さが違うので、深いほうでそろえて比べます。同じ60分浸けて、乾かしすぎたほうは9、湿っていたほうは39。4倍以上の差です。

論文も、乾き具合の違いだけで吸える水の量が4倍変わったと書いています。時間ではなく、浸ける前の状態が決めているのです。

結果を左右した順番を整理すると、こうなります。まず乾き具合、次に水の深さ、最後にようやく時間です。手をかけるなら、この順番でかけてください。

水の深さも効きました。論文は3種類の資材をまとめて、水を深くすると吸う量が6〜8%増えたと書いています。ピートモス単体の表でも増える方向は同じでした。腰水にするなら、浅く張るより深く張るほうがいい。

同じ大学の別の実験では、もっと極端なことが起きています。水が15%しかない状態まで乾かしたピートモス。これは水をはじく力が強すぎて、安定して吸わせることができませんでした。論文に、この条件の数値は載っていません。

なぜ、時間をかけても取り返せないのか

乾いたピートモスは、表面そのものが変わっています。フランスの研究チームが、乾いていくほど水をはじく度合いが強まることを報告しています。

乾きすぎると、ピートモスの表面は水を受け入れにくくなります。だから、水に長くつけても中までしみこみません。

ここに落とし穴があります。はじく面は、時間をかけてもはじき続けます。だから浸ける時間をのばしても、入らないものは入りません。

「何回かに分けて水をやればいい」という手も、ピートモスには効果が小さいという結果でした。60分を2回・3回・6回・12回に分けて比べていますが、いちばん多く吸ったのは、分けずに60分そのまま浸けたときです。

では、乾いてしまったらどうするか

答えは、その論文の「材料と方法」に書いてありました。実験の準備手順です。

研究者たちは、圧縮されたピートモスを実験用の湿り具合に戻すとき、浸けていません。大きな水槽に入れ、水を3リットルずつ加えては、そのつど手でかき混ぜていました。

この記事の前半で書いた「バケツに入れ、水を少しずつ加えながら手でもみほぐす」。研究者も、同じことをしています。

浸すのではなく、混ぜる。これが現場で使われている方法です。ぬるま湯も助けになります。ピートモスの製造業者は20〜30℃をすすめています。こちらは論文ではなく、メーカーが実務としてすすめている数字です。

すでに鉢に植わっている場合

ここまでは、袋から出したピートモスそのものの話です。鉢の中で乾いてしまった場合は、話が変わります。

カリフォルニア大学の園芸普及プログラムは、鉢を浅く水を張った容器に置く方法をすすめています。下から吸わせるやり方です。

そのうえで「完全に湿らせるには1時間以上かかることがある」としています。材料そのものより、長めに見た数字です。

鉢の中は土が詰まっていて、すき間が細くなっています。同じ「水につける」でも条件が違うので、鉢の場合は長めに見てください。

ただし同じ資料は、浸けっぱなしにしないよう警告しています。根が水に浸かり続ければ、今度は空気が足りなくなります。乾きを直そうとして根を傷めては、元も子もありません。

そしてもうひとつ。「はじくようになった土に、いつもどおり水をやっても戻る見込みは薄い」とも書いています。表面を濡らすだけの水やりを続けている限り、状況は変わりません。

※ここで挙げた数値は、育苗用のピートモスそのものを試験した結果です。論文を書いた本人たちも、使った試料が普通より水をはじきやすかった可能性に触れています。製品や配合によって幅が出る前提で、傾向として読んでください。


使用時に注意すること

pH(酸度)に気をつける

ピートモスはpH3.0〜4.5の強い酸性です。 そのまま使うと、植物によっては生育が悪くなることがあります。

酸性を好まない植物に使う場合は、石灰などで調整が必要です。 購入時に「酸度調整済み」かどうかを確認しておくと安心です。

高温・乾燥環境では管理が難しい

高温で乾燥した環境では乾きやすく、一度乾くと水をはじきやすくなります。 屋外での夏場管理には特に注意が必要です。

過湿に弱い植物には不向き

根が細い植物や過湿に弱い植物は、水と空気のバランスが崩れると根腐れしやすいです。 ピートモスを多く配合しすぎないように注意します。

コストに注意

ピートモスは軽くてコストも高めなので、広い面積に使う地植えには向いていません。鉢植えやプランターがメインの資材です。


配合例

ピートモスは単体では向かないので、以下の用土との組み合わせがメインになってきます。

用途(機能)配合例ポイント代表例
保水・通気のバランス赤玉土6:ピートモス3:パーライト1乾湿の振れを抑える観葉植物・一般鉢植え
酸性環境を作る鹿沼土5:ピートモス5無調整でpHを下げるブルーベリー・ツツジ類
清潔・均一な育苗バーミキュライト5:ピートモス5発芽・挿し木の水分管理が安定挿し木・種まき
軽量化・根張り促進培養土7:ピートモス3鉢の軽量化と初期根張りの安定室内栽培・ハンギング

配合はあくまでも目安です。植物・環境によって調整してください。

各用土について詳しく知りたい方はこちら


まとめ

ピートモスは「水もちのいい土」ではありません。湿っているあいだだけ、水もちのいい土です。

原料はミズゴケです。繊維状の構造にすき間が多く、水と空気を同時に抱えられます。ところが一度しっかり乾くと、水をはじくようになります。そこへ押し固めが重なると、空気の通り道まで失われる。水が入らない部分と、溜まりすぎる部分が同時にできる。根にとっては不安定な状態です。

要点を整理します。

  1. カナダや北欧の湿地帯で積み重なったミズゴケが原料
  2. 繊維状の構造ですき間が多く、軽くて水と空気を同時に保てる
  3. 水分が40〜60%の範囲を下回ると、急に水をはじき始める
  4. 押し固めると体積が縮み、空気の通り道が失われる
  5. 使う前に水を含ませてから使う
  6. 単体では向かない。赤玉土やパーライトと混ぜて使う
  7. pH3.0〜4.5の強酸性。酸度調整済みかどうかを確認する

乾かす → 水をはじくようになる → 水が入る場所と入らない場所ができる → 根の環境が不安定になる。

→ これだから、乾かしてはいけない用土です。

クセはありますが、使い方を理解すれば手放せない用土です。もともとはミズゴケだったという点から、乾燥が大敵と思って管理することが大切ですね。

明日からできることを、3つだけ挙げておきます。

  1. 使う前に、水を含ませてから鉢に入れる。乾いたまま入れると、あとから水をやっても入っていきません。
  2. 完全に乾かさない。水分が40〜60%を下回ると、急に水をはじき始めます。ここまで来ると、時間をかけて水につけても取り返せません。
  3. 買うときに袋の「酸度調整済み」の表記を確認する。未調整のものはpH3.0〜4.5の強酸性です。

参考文献

・University of Massachusetts Center for Agriculture, Food, and the Environment 「Bagged Potting Mixes and Garden Soils for Home Gardeners」 https://www.umass.edu/agriculture-food-environment/home-lawn-garden/fact-sheets/bagged-potting-mixes-garden-soils-for-home-gardeners

・North Carolina State University – Department of Horticultural Sciences 「The Use of Wood Fiber for Reducing Risks of Hydrophobicity in Peat-Based Substrates」 https://mdpi.com/2073-4395/11/5/907/htm

・Schulker, B.A.; Jackson, B.E.; Fonteno, W.C.; Heitman, J.L.; Albano, J.P. 「Exploring Substrate Water Capture in Common Greenhouse Substrates through Preconditioning and Irrigation Pulsing Techniques」Agronomy 11(7):1355 (North Carolina State University) https://woodsubstrates.cals.ncsu.edu/wp-content/uploads/sites/39/2021/09/65-refereed.pdf

・Fonteno, W.C.; Fields, J.S.; Jackson, B.E. 「A Pragmatic Approach to Wettability and Hydration of Horticultural Substrates」Acta Horticulturae 1013:139-142, ISHS (North Carolina State University) https://woodsubstrates.cals.ncsu.edu/wp-content/uploads/sites/39/2020/02/pragmatic-approach-to-wettability.pdf

・Michel, J.-C.; Rivière, L.-M.; Bellon-Fontaine, M.-N. 「Measurement of the wettability of organic materials in relation to water content by the capillary rise method」European Journal of Soil Science 52:459-467 https://bsssjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1046/j.1365-2389.2001.00392.x

・University of California Master Gardeners, Santa Clara County 「Watering Hydrophobic Soil」 https://ucanr.edu/site/uc-master-gardeners-santa-clara-county/watering-hydrophobic-soil

・Terracult International GmbH 「My substrate is very dry and poorly takes up water, what can I do?」(ピートモス製造業者の技術情報) https://www.terracult.com/faq/my-substrate-very-dry-and-poorly-takes-water-what-can-i-do

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この記事を書いた人

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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