【植木鉢】サイズと形の選び方|根の伸び方・乾き方・倒れにくさで決める

濃いグレーの鉢に植えられた、斑入りの葉のゴムの木。屋外のタイル床に置かれている

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「鉢を替えたら、なんだか調子が悪くなった」

そんな経験はありませんか。

土は新しいものを使いました。置き場所も、水やりのやり方も変えていません。変えたのは鉢だけ。それなのに土がいつまでも乾かなくなったり、逆に一日で乾いてしまったりする。

鉢はただの入れ物だ。多くの人はそう考えます。サイズさえ合っていれば、あとは部屋に合う見た目で選べばいい、と。見た目が大事なのはそのとおりです。ただ、それだけでは説明のつかないことが鉢の中で起きています。

実は、鉢の高さは、土のうち濡れたまま残る割合を決めています。素材は乾く速さを、幅は倒れにくさを決めます。同じ土を入れても、鉢が変われば土の状態は変わってしまう。

この記事では、鉢の高さ・素材・幅が鉢の中で何をしているのかを、大学の資料をたどりながら見ていきます。読み終わるころには、育てている植物の根に合わせて、自分で鉢を選べるようになります。


目次

植木鉢には、どんな種類があるのか

まず、売り場に並んでいるものを整理します。

素材で分けると、大きく3つに分かれます。

  • 素焼き鉢(テラコッタ) →つやのない、ざらざらした鉢。表面に何も塗っていない
  • 陶器鉢 →つやのある鉢。表面に釉薬(うわぐすり。焼くとガラスのようになる塗り薬)をかけてある
  • プラスチック鉢 →軽くて安く、形も色も豊富。園芸店の苗はほぼこれに入っている

形で分けると、標準鉢・浅鉢・深鉢の3つが基本になります。標準鉢は、深さが直径とだいたい同じ鉢。浅鉢はそれより浅く、深鉢(ロングポット)は縦に長い鉢です。側面に縦のすき間を入れたスリット鉢も、深鉢の仲間として売られています。

もうひとつ、鉢に見えて鉢ではないものがあります。鉢カバーです。底に穴がないので、水は抜けません。中に鉢ごと入れて使う容器で、これ自体に植えるものではありません。

日本の鉢の大きさは「号」で表します。林野庁の苗木の資料には、ポット苗の大きさとして「3.5 号(105mmφ)」と書かれています。1号がおよそ3cm、という意味です。6号なら直径18cmほど。

ここで見落としやすいことがあります。号が表しているのは直径だけで、深さは含まれていません。同じ6号でも、深いものと浅いものがあります。そして鉢の中で起きることを決めているのは、直径ではなく深さのほうです。

鉢の高さが変わると、中に残る水が変わる

ここが今回のいちばん大事な部分です。

水やりをすると、余分な水は鉢底の穴から流れ出ます。ところが、したたる水が止まったあとも、鉢底の近くには水が残ったままになります。土の細かいすき間が、水を強く引きとめているからです。

この、穴が開いているのに底にたまり続ける水を「宙水」と呼びます。1976年のアメリカの園芸資料は、こう説明しています。水が自由に抜けられる鉢でも、鉢底には水の層ができる、と。

この資料は、台所のスポンジで確かめる方法を紹介しています。スポンジを水にひたして、平らに置きます。水がしたたらなくなるまで待つ。そのスポンジを、そっと立ててみてください。また水が落ちてきます。中身は何も変えていません。背が高くなっただけで、水が出ていく。

鉢の中の土も、これと同じことをしています。だから同じ土を入れても、深い鉢は乾き、浅い鉢は濡れたままになる。

資料の結論はこうです。鉢の土が深いほど、水やりのあとの土に残る水の割合は小さくなる。

ここは「量」ではなく「割合」です。深い鉢は土そのものが多いので、鉢全体でためこむ水の量はむしろ増えます。同じ1杯の土で比べたときに、濡れている土の割合が小さくなる、という話です。

バージニア工科大学の資料にも、背の高い鉢のほうがよく水が抜ける、と書かれています。

水が残るということは、その分だけ空気が入れないということでもあります。オクラホマ州立大学の資料は、そこを空気の側から書いています。

鉢の中の土が浅くなるほど、空気の入るすき間は減る。そう書かれています。

これだからこうなる
土の細かいすき間が水を引きとめる

穴が開いていても、鉢底に水の層が残る

これだからこうなる
鉢が浅いと、土の全体がその層に近い

空気の入るすき間が減り、乾きにくくなる

これだからこうなる
鉢が深いと、上のほうの土は水の層から遠い

同じ土でも早く乾き、空気が入りやすい

ひとつ条件があります。鉢底にできる水の層の厚みは、土の粒の細かさで変わります。細かい土ほど水を高く引き上げるので、深い鉢にしても乾きにくいまま。赤玉土のような粒の土と、粉に近い土とでは、同じ深さでも結果が変わります。

鉢底石を入れている場合は、もうひとつ考えることが増えます。石を敷いた高さのぶん、土の底の位置が持ち上がるからです。深い鉢を買っても、中身は浅い鉢に近づく。この話は鉢底石は本当に必要かでくわしく書きました。

根の伸び方は、植物によってこんなに違う

では、深い鉢と浅い鉢のどちらを選ぶのか。ここで根の話に入ります。

根の形は、大きく2つに分けられます。生物学の教科書の説明はこうです。

ひとつは、太い主根が下へまっすぐ伸びる型。タンポポやニンジンが、この形です。

もうひとつは、細い根が地表の近くで網のように広がる型。イネや芝がこれにあたります。

下の写真は、鉢から抜いた株の根です。上のほうに細い糸のような根が広がり、その下に黄色っぽい太い根がかたまっています。1株の中に、両方あります。

土の上に置かれた植物の根。上のほうに細い糸のような根が広がり、下に黄色っぽい太い根がかたまっている

観葉植物は、この2つのどちらかにきれいに収まるとはかぎりません。ストレチアがいい例です。

ストレチアの原産地は南アフリカです。その国の公的な植物図鑑には、根についてこう書かれています。

The roots are fleshy and finger-like and ± 25 mm in diameter.

指のように太い、肉づきのいい根。その太さは25mmほど、つまり2.5cm。オックスフォード大学の解説でも、地下の茎から肉質の指のような根が出ると説明されています。

ここは慎重に読む必要があります。この資料が書いているのは根の太さと形だけで、「深い鉢が向く」とは書いていません。ストレチアは株立ちになる植物で、根は横方向にも広がります。栽培について書かれているのは、水はけの良い土に植えることだけです。

2.5cmという太さを、指で作ってみてください。500円玉より少し大きいくらい。この太さの根が何本も入るには、それだけの場所が要ります。鉢を選ぶときに見るのは「深さ何cm」という数字ではなく、その根がゆったり収まる空間があるかです。浅い平鉢では、そこが足りなくなります。

逆に、細い根が浅く広がるタイプなら、深い鉢の底のほうは根が来ない場所になります。根が来ない土は水を吸われないまま、長いあいだ濡れています。

容器の形が根の形を決めてしまう、という指摘もあります。林野庁の苗木の資料には、こう書かれています。

ポット苗の根鉢は太くて短い形をしていますが、コンテナ苗の根鉢は細長い形をしています

鉢から抜いた根鉢。円筒形のまま、外側と底が細い根でびっしり覆われている。切り開いたプラスチック鉢が横に添えられている

抜いた根鉢を見ると、これがよくわかります。鉢の内側に沿って根が回り、鉢の形をそのまま写し取った円筒になっています。とくに底のあたりが密です。

同じ樹種でも、太い容器で育てれば太く短い根のかたまりになり、細長い容器なら細長くなる。鉢は、根の形を決める型(かた)でもあります。

ひとつ正直に書いておきます。「この植物なら深さ何cmの鉢が要る」という形で数字を出した試験は、調べた範囲では見つかりませんでした。だから深さは、数字ではなく、植え替えのときに見えた根そのもので決めます。

素材で「乾く速さ」が変わる

ここからは素材の話です。バージニア工科大学の資料が、3種類をきれいに整理しています。

素焼き鉢は、低い温度で焼いた、釉薬をかけていない土です。バージニア工科大学の資料は、その性質をこう説明しています。

釉薬をかけていないので、水は鉢の壁を通り抜けられます。鉢の壁そのものから水が蒸発する。根のまわりは、そのぶん早く乾きます。

濡れたタオルを思い浮かべてください。そのまま干せば、翌朝には乾いています。同じタオルをビニール袋に入れて口を閉じたら、次の日も濡れたまま。素焼きは干したタオル、袋に入れたタオルがそれ以外の鉢です。

そして、誤解されやすいのがここから先です。「陶器だから通気性がいい」わけではありません。

同じ資料は、釉薬をかけた陶器鉢を別のものとして扱っています。高い温度で焼き、外側にコーティングがしてある。壁から水は逃げず、土は水持ちが良くなる、と書かれています。

逃げないのは、あくまで壁を通る分です。土の表面からの蒸発と、根が吸い上げる分は、どの鉢でも同じように減っていきます。

素焼きも釉薬をかけた陶器も、材料は同じ土です。表面の加工と焼く温度で、性質が逆になる。売り場で見分ける手がかりは、つやです。つやがあるなら、壁から水は抜けません。

プラスチック鉢も同じ側にいます。水が出ていくのは、鉢底の穴と土の表面だけ。壁からは減りません。

色にも触れておきます。黒いプラスチック鉢は夏に温度が上がりすぎることがある、とオクラホマ州立大学の資料は注意しています。屋外の直射日光では、素材の差より鉢の温度のほうが問題になる場面もあります。

つまり素材は、水やりの間隔をずらす部品です。乾きにくい室内に置いていて、つい水をやりすぎてしまうなら素焼き。ベランダで一日で乾いてしまうなら、つやのある鉢かプラスチック鉢。赤玉土で根腐れが起きるときのように、土だけを見ていても答えが出ないことがあります。

背が高くなる植物は、倒れないかで選ぶ

ゴムの木のように大きく育つ植物では、もうひとつ考えることがあります。倒れるかどうかです。

空の2Lペットボトルを机に立てておくと、手が当たっただけで倒れます。同じボトルに水を入れたら、そう簡単には倒れません。重さが下にあるかどうかで、倒れにくさは変わります。

軽いプラスチック鉢に、軽い用土。この組み合わせは、空のペットボトルに近い状態です。パーライトのように軽い資材を多く混ぜるほど、鉢は軽くなります。室内なら困りませんが、屋外では風で倒れます。背が高い植物ほど、風を受ける面積も大きい。

ここでオクラホマ州立大学の資料が、選び方の勘どころを教えてくれます。

幅のある鉢のほうが倒れにくい。ここまでは想像どおりです。ところが、そのすぐあとにこう続きます。

The diameter of the container has no bearing on drainage.

鉢の直径は、水の抜け方には関係しない。深さが同じ鉢どうしなら、太くても細くても同じように抜ける。そう書かれています。

関係しないのは「水の抜け方」だけです。太い鉢は土の量が増えるので、乾くまでの時間は長くなります。同じ資料には、小さい鉢ほど土は早く乾くとも書かれています。

これは、鉢選びを2つの軸に分けてくれる指摘です。深さは水と空気を決める。幅は倒れにくさを決める。だから太い鉢を選んでも、水の抜け方が悪くなる心配はいりません。乾くまでの時間だけ、長くなると考えておけば足ります。

同じ資料は、深い鉢の弱点にも触れています。深い鉢では根が横へ広がるのが遅れ、風で倒れやすくなる。幅とつり合っていない背の高い鉢は、植えたままでも倒れることがある、と書かれています。

深さが要る植物ほど、鉢は倒れやすい側へ寄っていく。ストレチアやゴムの木を屋外に置くなら、ここがぶつかります。

では、どの鉢を選ぶか

ここまでの3つを、そのまま表にします。

鉢のどこ決まること迷ったときの目安
深さ残る水と、入る空気の量根が下へ伸びる植物は深く。浅く広がる根なら標準〜浅め
素材乾く速さ乾かない置き場所なら素焼き。乾きすぎるならつやのある鉢かプラスチック
幅・重さ倒れにくさ(深さが同じなら、水の抜け方は変わらない)背が高い植物・屋外なら、幅があって重い鉢

素材そのものの比較も並べておきます。

種類壁から水が抜けるか重さ向いている場面
素焼き鉢(つやなし)抜ける中くらい室内で乾きにくい。水をやりすぎてしまう
陶器鉢(つやあり)抜けない重い乾きすぎる場所。背が高い植物を屋外に置く
プラスチック鉢抜けない軽い室内。置き場所をよく動かす
鉢カバー底に穴がないものによる鉢ごと入れて使う。これに直接植えない

組み合わせで考えると、こうなります。

  • ストレチアなど、太い根が下へ伸びる植物 →深めの鉢。屋外に置くなら、そのぶん幅と重さで支える
  • 根が浅く広がる植物 →標準鉢。深い鉢だと、底の土が濡れたまま残る
  • 室内で、いつも土が乾かない →素焼き鉢。壁からも水が減っていく
  • ベランダで、すぐ乾いてしまう →つやのある陶器鉢かプラスチック鉢
  • 背が高くて、屋外に置く →幅のある重い鉢。軽い鉢なら、置き台や鉢カバーで下に重さを足す

鉢を選ぶときに気をつけたいこと

最後に、買う前に確かめたい点を並べます。

号は直径。深さは自分で測る。通販の商品ページには、直径だけ書かれていることがあります。深さが書いていなければ、写真の縦横の比を見るか、問い合わせるほうが確実です。

鉢底の穴を見る。オクラホマ州立大学の資料は、生産者向けの目安として、鉢底の穴の面積は底の20%以上が望ましいと書いています。家庭用の鉢がここまで開いていることは、あまりありません。穴が小さい鉢ほど水は残ると考えておくと、水やりを間違えずにすみます。

大きすぎる鉢に、いきなり植えない。根が届かない土は、水を吸われないまま濡れています。バージニア工科大学の資料も、大きい鉢では水やりの回数が減ると書いています。裏を返せば、それだけ乾きにくいということ。

鉢カバーに入れっぱなしにしない。底に穴がないので、抜けた水はカバーの中にたまります。鉢底が水につかった状態が続けば、根の呼吸する場所がなくなります。

丸い鉢では、根が内側に沿ってぐるぐる回ることがあります。同じ資料によれば、回った根は、地面に植え替えたあとも元どおりには育たないという報告があるそうです。スリット鉢や四角い鉢は、この回り込みを減らすために作られた形です。

まとめ

植木鉢は、サイズと見た目だけで選ぶものではありません。

水やりのあと、鉢底には水の層が残ります。鉢が浅いほど、土の全体がその層に近づき、濡れている土の割合は大きくなる。素材にコーティングがあれば、壁から水は逃げません。そして幅は、水の抜け方ではなく、倒れにくさのほうに効きます。

根が下へ伸びる → 深さが要る → 深い鉢は倒れやすい → 幅と重さで支える。

→ これだから、鉢は「根の形」から選ぶ。

明日からできること

  1. いま使っている鉢の内側の深さを測る。号数は直径であって、深さではない
  2. 次の植え替えのとき、鉢から抜いた根を見る。太い根が下へ向かっているのか、細い根が浅く広がっているのか
  3. 鉢の表面を触る。つやがあるなら壁から水は抜けないので、水やりの間隔を今より空ける

参考文献

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この記事を書いた人

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よた|YOTA PLANT BASE
植物の状態を「なぜそうなるか」で解説する園芸ブログを運営。

試行錯誤の中で再現性の低さに課題を感じ、感覚に頼らない「理屈で育てる園芸」を追求。
用土・水分・栄養の関係を軸に、構造とデータから再現性の高い栽培方法を検証しています。

農林水産省・研究機関の一次情報をもとに、初心者でも再現できる形で発信しています。

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