本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。
当サイトはAmazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。
「日当たりの良い場所に置いているのに、なぜか茎だけがひょろひょろ伸びてしまう」
そんな経験はありませんか。
葉は小さいまま、茎だけが間延びして頼りない姿になってしまう。これは「徒長(とちょう)」と呼ばれる現象です。種から育てた苗でも、買ってきたばかりの元気な苗でも、環境が合わないとすぐにこの状態になってしまいます。
多くの人は「光が足りないから徒長する」と考えます。もちろんそれも一因ですが、それだけでは説明できないケースがたくさんあります。日当たりの良い窓際に置いているのに徒長してしまったり、逆に光がそれほど強くない場所でも、まったく徒長しない植物もあります。この違いはどこから生まれるのでしょうか。
実は徒長の裏側には、植物が持っている「あるしくみ」が関係しています。それは、植物が光を単なるエネルギー源としてだけでなく、「今、自分がどんな環境にいるか」を知るための情報として使っている、というしくみです。
このしくみを知ると、なぜ徒長が起きるのか、そしてどうすれば防げるのかが、自然と理解できるようになります。単に「光を当てればいい」という表面的な対策ではなく、根本の原因から順を追って見ていきましょう。
徒長ってなに?
徒長とは、茎や枝が、通常よりも細く長く伸びてしまう現象のことです。葉と葉の間隔が広がり、全体がひょろひょろとした姿になります。
わかりやすい例が「もやし」です。もやしは真っ暗な場所で育てられます。光がまったくない中で、少しでも早く光にたどり着こうとして、茎を一気に伸ばします。あの細長い姿こそ、徒長した状態そのものです。
家庭で植物を育てているときも、これと似たことが起きます。真っ暗な場所に置いているわけではなくても、見た目にはわかりにくい形で「もやしと同じ反応」が静かに進んでいることがあるのです。
徒長した植物は、見た目が不格好になるだけではありません。茎が細くなるため、自分の重さを支えきれずに倒れやすくなり、株全体の元気もなくなっていきます。まずはこの点を知っておいてください。
植物は光を「見て」いる
ここで少し不思議な話をします。
植物は、私たち人間のように目を持っているわけではありません。しかし、光を感じ取るための「センサー」を体の中に持っています。
このセンサーは、ただ光があるかないかを調べているだけではありません。光の「量」だけでなく、光の「種類」まで見分けています。太陽の光にはさまざまな色の光が混ざっていますが、植物はその中の「赤色の光」と「遠赤色の光(赤色よりもさらに赤に近い、目には見えにくい光)」の割合を、常にチェックしているのです。
なぜこんなことができるかというと、光の色の割合を見れば、まわりに他の植物がいるかどうかが分かるからです。太陽の光がそのまま届く場所と、他の葉を通り抜けてきた光が届く場所とでは、含まれる光の色の割合がまったく違います。
このしくみがあるからこそ、植物は葉が茂った暗い場所にいなくても、「今、自分がどんな環境に置かれているか」を正確に判断できるのです。
なぜ徒長するのか
ここが今回の記事でいちばん大事な部分です。
植物のまわりに、他の葉や植物が茂っていると、太陽の光はそのまま届きません。葉に当たった光のうち、赤色の光は光合成に使われるため、主に吸収されて減ってしまいます。一方で、遠赤色の光はあまり吸収されずに、そのまま通り抜けたり反射したりします。
その結果、植物のところに届く光は「赤色が少なく、遠赤色が多い」状態に変わります。晴れた日の直射日光と、木の葉の下に差し込む光を比べると、後者のほうが遠赤色の割合が高くなっている、というイメージです。
植物の中にある光のセンサーは、この変化を敏感に感じ取ります。そして、「まわりに他の植物がいて、自分は日かげに置かれている」と判断するのです。
日かげにいると、光合成に必要な光が十分に得られません。放っておけば、まわりの植物との光の奪い合いに負けてしまいます。そこで植物は、少しでも早く、少しでも高く茎を伸ばして、光がある場所まで届こうとします。葉を大きくすることよりも、まず茎を伸ばして高さを稼ぐことを優先するのです。
これが徒長の正体です。徒長は、単なる「光不足の結果」ではありません。植物が「このままでは生き残れない」と判断し、自分の意思で選んだ、生き残るための反応なのです。この反応は、野生の植物が限られた光を奪い合う中で身につけてきた、いわば生存戦略のひとつだと考えられています。
光だけが原因ではない
ここまで読むと、「じゃあ光さえ十分に当てれば徒長は起きない」と思うかもしれません。しかし実際には、光以外にも徒長を引き起こす条件があります。
- 苗と苗を近づけすぎて育てている(密植)
- 水をあげすぎている
- 肥料をあげすぎている
- 風がまったく当たらない場所で育てている
たとえば苗を密集させて育てると、光の量そのものは十分でも、隣の苗の影に入ってしまい、さきほど説明した「日かげと同じ状態」が起きます。畑や鉢植えで苗を近づけすぎると徒長しやすいのは、このためです。
また、水や肥料を与えすぎると、植物が必要以上に成長を急いでしまい、細胞がどんどん伸びる方向に働きやすくなります。特に肥料の中の窒素分を与えすぎると、葉や実よりも茎ばかりが伸びる傾向があると言われています。
風がまったく当たらない環境も見落とされがちな原因です。風によって茎が揺れる刺激を受けると、植物は茎を太く丈夫に育てようとします。逆に風がまったくない環境では、この刺激が足りず、細く長い茎になりやすいのです。
つまり徒長は、「暗いから起きる」というより、「まわりの環境が、植物に”日かげだ”と誤解させてしまうこと」で起きる、と考えるほうが正確です。
徒長するとどうなる?
徒長した植物を放っておくと、見た目の問題だけでは終わりません。
茎が細く長く伸びるため、自分の体を支えきれずに倒れやすくなります。また、急いで茎を伸ばすことにエネルギーを使ってしまうため、寒さや乾燥への抵抗力も弱くなります。育ちそのものが悪くなり、花や実のつきが少なくなることもあります。
農業の現場でも、徒長した苗はそうでない苗に比べて、その後の生育や収穫量に差が出ることが分かっています。家庭で植物を育てる場合も同じで、徒長を放置したまま育てると、その後どれだけ丁寧に世話をしても、なかなか元の元気な姿には戻りにくくなります。
つまり徒長とは、「見た目がひょろひょろになる」というだけでなく、植物全体の体力が落ちてしまう現象でもあるのです。早めに気づいて対策をとることが、なによりの近道になります。
徒長のサインをチェック
自分の植物が徒長しているかどうかは、次のポイントで確認できます。
- 茎の節と節の間が、いつもより間延びしている
- 葉の色がうすく、小さい
- 茎が細く、指で触るとふにゃふにゃしている
- 一方向にだけ、不自然に傾いて伸びている
これらに複数当てはまる場合は、すでに徒長が始まっているサインです。一つだけなら他の原因かもしれませんが、複数のサインが重なっているときは、環境を見直す良いタイミングだと考えてください。早めに気づくほど、対策の効果も出やすくなります。
徒長を防ぐには
原因がわかれば、対策はシンプルです。
- 日光がしっかり当たる場所に置く。室内なら植物用のライトを使うのもよい
- 苗と苗の間を十分に空けて植える
- 水や肥料は、必要以上に与えすぎない
- 扇風機やサーキュレーターなどで、軽く風を当てる
日光の当て方を見直すときは、光の量だけでなく方向にも注意しましょう。窓際に置いていても、片側からしか光が当たらないと、その方向に伸びようとして姿が崩れることがあります。時々鉢の向きを変えてあげると、まんべんなく光を受けられます。
どれも特別なことではありません。大事なのは、「植物が”日かげだ”と勘違いしない環境を作ってあげること」です。ひとつひとつは小さな工夫でも、組み合わせることでしっかりとした効果が期待できます。
まとめ
徒長は、「光が足りないから起きる、単純な失敗」ではありません。
植物は、光の量だけでなく光の種類を感じ取るセンサーを持っています。まわりの環境によって「日かげにいる」と判断すると、生き残るために自分の意思で茎を伸ばします。密植や水・肥料の与えすぎ、風不足も、同じように「日かげだ」という誤解を植物に与えてしまいます。
光が足りない → 植物が日かげだと感じる → 生き残るために茎を伸ばす。
→ これだから、徒長する。
原因を知ってしまえば、あとは環境を整えるだけです。置き場所、水やり、風通し。ひとつずつ見直していきましょう。徒長のサインに早く気づき、小さな工夫を積み重ねることが、丈夫な株を育てる一番の近道になります。
参考文献
- 日本植物生理学会「植物が光を感じる仕組み」 https://jspp.org/hiroba/essay/nagatani.html
- 北海道立総合研究機構「てんさいの育苗管理と徒長防止技術」 https://www.hro.or.jp/agricultural/center/result/kenkyuseika/gaiyosho/h02gaiyo/1989011.htm
- 日本植物生理学会誌「植物の光情報受容体フィトクロムの細胞内シグナル伝達機構」 https://www.photosyn.jp/journal/sections/kaiho51-4.pdf
- 東北大学関連資料「発芽/子葉<徒長>」 http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/watanabe/as-vegetable2016/2016/11/13153302.php

コメント